少年ダイナミクス



 あれは……ついこの前のこと。


 ちょうど高校の二年生に上がったばかりの新学期の春のできごとだったよ。


 あの日は、窓を見ると桜の花びらが散っていて、爽やかで暖かい……春の風が吹いていたんだよね。


 だから僕は、とても心地よい気分で授業を受けることができた訳だ。


 けれども、だよ。
 けれども、そんな僕の気分を害したのは、何を隠そう……国語の教師の後藤ってヤツだよ。


 アイツはたちが悪くてさ。


 授業中に、女の子の髪の毛の色を指摘しやがったんだ。


「お前、髪の色……明るいぞ」
 ってね。



 その女の子、佐々木さんって名前だったんだけど、僕は知ってたんだよ。


 佐々木さんは決して髪の毛を染めている訳ではなく、元々の色素が薄いだけだってね。


 佐々木さんは、
「違うんですよ」


 とか弁明していたけど、あの教師は、
「黒に染めてこい」


 とか言いやがるから、ちょっとプッツンとしちゃってね。


 ほら、僕は元々……生徒会だったからね。先生には媚を売らないといけなかったわけ。


 特にアイツは生徒指導の先生で、かなり怖い先生だから余計に反抗しちゃいけないんだけど。


 その時だけは我慢ならなかったね。

 僕は、ばん!

 って教科書を机に叩きつけちゃったんだ。ほとんど衝動的にね。


 そしたら全員がこっちを向くわけ。
 全員の視線が僕に集まるわけだよ。


 今さら「間違いでした」って顔をするわけにもいかないから、ささやかに先生に反論しようと思ったんだ。



 でも、僕の心は苛立っている訳でしょう?


 押さえられなかったね。



「この学校のは見た目で判断すんのか? あぁ? どうなんだよ。生徒指導の先生よ。


 あの子は元々の色素が薄いって、みんな知ってんだろ? それを染めてこい? 本末転倒もいいとこじゃねぇか! 


 この学校には理解のない先公しかいねぇのかよ! この学校にはクズ教師しかいねぇのかよ! どうなんだよ。あぁ?」


 しまった!
 て思った時にはもう遅いんだよね。


 僕は極めて冷静に抗議をしようと思ったつもりが、思わず感情的になっちまって。