次の日の学校への登校の道は、いつもとは違った。


 隣に少女がいたからね。
 僕は、彼女の名前を知らない。


 でも、名前とかはどうでもいいくらいだった。


 彼女と最初に向かったのは保健室ではなく屋上だった。


 僕たちはこれから新しい世界に羽ばたくのだ。


 新しい世界で、共に人生の長い道のりを歩むのだ。



 屋上は立ち入りが禁止されていたが、僕たちはその忠告を無視した。



 僕は、少女が立って隣に居ることが嬉しかった。

 屋上には、風が吹いていた。その風は、少女の髪の毛を優しく揺らしていた。



 空は青く、どこまでも透き通っていた。

 一直線の長い飛行機雲が、くっきりと空に引かれている。



「ねぇ。これから私たち、新しい世界に羽ばたくんだよ」


 と、少女は言った。


 僕は、うなずいて決意した。

「ねぇ。本当に新しい世界に飛ぶんだよ?」


 と、彼女は言う。



 地上の摩天楼の景色に胸を踊らせながら、僕たちは地上へと足を進めた。



(完)