ふと、僕は気が付いた。
みるみる少女の胸から空間にかけてのひび割れが溶けていく。
それは、氷が気温の上昇によって溶け出していくように、ゆっくりと、周囲の空間へと流れていくのだった。
僕も驚いたけれど、彼女のほうがよりビックリしているみたいだった。少女は、自分の周囲の空間に目を向けて、ひび割れが溶けていくのを喜んでいる様子だった。
少女は立ち上がった。
僕は、彼女が立ち上がる姿を初めて見た。その姿は僕にとって神々しく見えた。
彼女は口を開く、
「やったぁ! 見て、見て、これで私たち学校に行けるよ!」
彼女は、ひび割れが溶けて自由になったことよりも、学校へ行ける事実のほうに喜びを感じているようだった。
「そうだね、これで、一緒に学校に行ける」
僕は嬉しかった。
今までは、彼女に会うためには、わざわざ中央公園まで行かなければならなかったが、これからはもっと色々な場所へと行ける。
それが途方もなく嬉しかった。