「君は、学校に行きたいんだ」


 と僕は聞いてみた。ちょっと悲しそうな表情を浮かべていたから、気になったんだ。


「うん。行きたいな」



 って彼女は言ったんだ。


 心なしか、彼女のひび割れは、少しだけ大きく広がっているような気がした。



「僕は、あんまりだな。真面目に勉強しても、先生の言うことを、よく聞いても全く充実していないし、楽しくないんだ」


 僕は、つい思っている事を口にしてしまった。言ってから少し後悔した。



 学校に行けない少女に対して、あんまりネガティブな事は言いたくなかったからね。




 そしたら彼女は、すごい不思議そうな顔をしていたんだ。


「ねえ、どうしてアナタは学校がキライなの?」


 って、そんなことを言うんだよ。



「私は、学校に行きたいな。早くひび割れが治って、いろんなことを勉強したい」



 悲しそうだった。
 僕の心は締め付けられるようだった。


 これじゃあ、まるで彼女は不治の病に侵された病人じゃないか。



「そっか。じゃあ、君のひび割れ、治ったら一緒に学校に行こう?」



 僕はまた、彼女と約束してしまっていたんだ。そうして、また楽しみが増えたって訳さ。


「約束だよ?」


 と、彼女は言った。僕はそれに力強くうなずいたんだ。




 気がついたらさ、中央公園は、昨日と同じように陽が陰っていてさ、



 少女の姿は、うっすらとしか見えない訳さ。でも、その少女の華奢なシルエットは、僕にとって何よりも美しい。って思ったんだ。


 それで、近いうちにこの少女のひび割れを治してさ、一緒に学校に行きたいなって、そう感じたんだ。


 約束もしちゃったしね。