少年ダイナミクス




 中央公園に向かうとき、僕の心臓の鼓動はとにかく速くなっていてさ、


 もう飛び出すんじゃないかって、心配になったくらいだよ。


 走っているから、心臓の鼓動が速くなるのかもって思ったけど、


 どうやらこれが恋愛感情ってやつみたいなんだよね。


 すごく爽やかな気分だったよ。



 木の匂いが近くなっててさ、新鮮な風が僕の頬を撫でるわけ。


 なんか、急ぐ必要は無いってわかっているんだけど、どうしても走っちゃうんだよね。



 僕は早足で公園の中に入って、昨日と同じ場所に向かったんだ。


 そしたら、あの少女は昨日とおんなじ場所に居てさ、


「来てくれたんだ」


 って僕に話しかけてくれたんだ。嬉しかったねぇ。



 僕には、彼女の透き通るような声「来てくれたんだ」が本当に女神さまの声みたいに聞こえたんだ。



 彼女にまた会えたってだけで、飛びはねて喜びそうだったよ。



 僕は、ちょっと息を切らしていたから、少しの間、息を整えながら、彼女の方に向かったんだ。


 それで、僕はあることに気がついたの。



「あれ? 君のひび割れ、ちょっと広がっているみたい」


 僕は気がついたんだよね。彼女の胸から広がる……割れたガラスみたいな空間のひび割れが、


 昨日より、広がっている。



「うん。でも、仕方ないの」
 と、少女はは言う。



「そう。ちょっと心配だよ」
 僕が言うと彼女は、昨日と同じ、儚い笑顔になって、

「大丈夫よ。来てくれて、ありがとう」
 と言った。



 僕は嬉しかったねぇ。
 だって二度も、来てくれてありがとう。なんて言われたんだから。


 彼女はもしかしたら、本当に僕が来てくれて嬉しいのかもしれないって思ってね。


 幸せな気持ちになったんだよ。


 で、僕はどうしても彼女に聞きたいことがあってさ、ちょっと聞いてみたんだ。



「ねえ、君の名前…………なんていうの?」