千幸はスカウトを受けた大学のひとつに進み、大吾は野球とは無関係に、いわゆるFランクと呼ばれる私大の経済学部にかろうじてひっかかった。
以来、離れてしまった進路ゆえにもう五年以上会っていなかった。
大吾が夏休みや年末年始に里帰りして来ていても、なぜか千幸は一度たりとも帰って来なかったのだ。
千幸は、どれほど炎天下で焼かれても練習で泥だらけになっても、汗臭くても、妙に清潔で端正でモデル顔負けのルックスをしていた。急に醜悪になったとか腹が出たとかなんてことはないと思うが、久々の再会だけに不安もある。
他の人間はともかく、千幸だけはルックスがマイナスになっていてほしくない。
たとえ野球を辞めていたとしても。