「次からはチラシデザイン、もっと凝ったら? 正之丞さんイケメンなのにふつうのデザイン過ぎてつまんないよ、これ」

 真幸は淡々と言うと、チラシを封筒に戻した。
 正之丞はもう一杯緑茶を注ぎながら、「だったら姐さんがやってよ」と唇を尖らせた。

「じょーだんでしょ。もうわたしは引退したのよ。いまはただの食堂のおばちゃん」

 自嘲気味に笑って、真幸はできたばかりの「味噌豆」といんげんと山芋のおひたし、小女子の佃煮入り卵焼きを三点付け用の小皿に盛り合わせ、正之丞の前に置いた。
 正之丞は「うまそう」と呟いて、割り箸を手に取った。

「おばちゃんだなんて思ってないくせに」

 まず卵焼きを口に運び、正之丞はにっと口角を引き上げた。

「わたし、何歳だと思ってんの?」
「おれより四歳上だっけ?」

 正之丞はもぐもぐと咀嚼しつつ、首を捻った。真幸はすぐに「五歳」と返した。