「5万円持ってきた?」

昨日と同じ好青年だね。

「うん。
少女漫画の【ロマンティックなキスして! 王子!!!】を持ってきたよ」

背負っていたリュックサックを開ける。

「しょ…」

「【冷たい口づけ】も面白いよ。
今度持ってきてあげようか?」

「ふざ…」

「ごめん!
家に忘れたみたいだ。
また今度持ってくるよ」

「……そっか。
今度で良いよ」

怒りに変わりそうだった好青年の表情が優しい笑顔になる。

「うん……。
ありがとう…」

好青年が体ごと前を向く。

諦めてくれて……良かった……。


「あの……」

僕は今、誰も居ない空き地で、見知らぬ学校の制服を着た3人の男達に囲まれている。

「少女漫画…だっけ?
忘れた事許そうかと思ったけど、許せないや」

好青年も居る。

「やれ」

好青年の言葉と同時に僕を取り囲んでいる3人の男達がこちらに近づいてくる。