「げっ、お前は……ていうか、猫が喋った……」
「まぁそうなるよねー。うんうん、ボクを見た人は大体同じような反応をするよ」

 白猫はもう飽きたと言わんばかりの退屈そうな物言いだったものの、どこか真面目な雰囲気をまとっていた。

「さて、時間がないから手短に話を進めさせてもらうよ。まずボクが現れたことについてだけど、これは簡単、君の記憶が戻ったからだね。記憶がある君に今更ボクの存在を隠す必要はないからね」

 ただし、と白猫は私に念を押した。

「それでも千歳ちゃんが未来のことを語ってはならないというルールは健在だよ。これはボクが決めたものではなく、この世界そのもののルールなんだ。君がうっかり余計なことを喋っちゃうとその瞬間未来に帰ることになっちゃう。だから代わりにボクが説明する」

「え、この世界のルールなら猫ちゃんが喋るのもダメなんじゃ……」

「あははは、まあね! 後でまた神様にこっぴどく怒られると思うよ、干渉のし過ぎだーって。でもせっかくここまで来たんだから、手助けのひとつくらいさせてよ」

 口ぶりからしてどうやら白猫は怒られ慣れているらしい。過去にも私と似た境遇の人に同じようなことをしたことがあるんだろうか。どちらにせよ今の私たちにとってこの上なく頼りになることは間違いない。