◇ ◇ ◇

 高校入学当初、私は隣の席に座る誠くんを変な人だな、と思った。
 いつもスマホばかりを見ていて、昼休みになるとどこかへふらっと消えてしまう。授業もろくに聞いていないみたいでいつも先生に叱られていたっけ。

 そんな彼と私の関係性は、ただの他人、そのひと言が相応しかった。
 話しけることも、話しかけられることもない。挨拶すらしない。ただクラスが同じで席が隣なだけの全くの他人。道ですれ違う通行人と何ら変わらない関係性。

 当時の私はそれでよかった。
 教室の隅で空気のように座ることが明るい性格ではなかった私には何よりも重要なことだった。

 友達が欲しいとは思うけれど、それ以上に他人に話しかけるという行為がたまらなく苦痛だった。

 何か原因があったわけじゃない。ただ、生まれつきそういう性格だっただけ。

 高校入学当初は希望通りの目立たず平和な生活ができていた。あの日、クラスの子から、いじめを受け始めるまでは。

 金髪で、休み時間になるといつもゲラゲラと笑っている彼女たちはある日唐突に私に目をつけた。どうして自分がいじめられることになったのか私にはわからなかった。

 思い返せば、きっと誰でもよかったのだと思う。一方的に攻撃できる弱い相手ならば誰でも。そういう意味で言えば私ほど手を出しやすい相手はいない。いつもひとりで俯いて、誰とも話そうとしないのだから。派手な彼女たちからすれば地味な私は恰好の餌食だったに違いない。