夜もふけって。


 悠大はお風呂に入る為1階へ降りてきた。


 すると…。

 お風呂場から出て来た和也がいた。

 和也を見た悠大は。

「??? 」

 声にもならない驚きの表情を浮かべた悠大。

「ん? 」

 和也は悠大を見た。

 悠大は驚きのあまり声も出ないのか、和也を指さした。


「あ? 」


 濡れた髪をタオルで拭きながら現れた和也は…

 全裸のままだった!


 若くて引き締まった和也の体を見て驚いたのもあるが、人の家にいて全裸で歩いて出てくる事に悠大は驚いているようだ。


 驚いた顔をして指をさしている悠大を見て、和也はふと自分の姿を見た。


「あ、悪りぃ悪りぃ。ちょっと湯船に漬かり過ぎちまってさぁ」

 笑ってごまかしている和也。

すると

 足音が近づいてきた。


 悠大はハッとして、和也を脱衣所に連れ込んだ。


「わぁ、何すんだよ! 」
 
 と、叫ぶ和也の口を悠大は手で塞いだ。




「あれ? 和也君? お風呂まだ入っているの? 」

 嶺亜の声が聞こえてきた。


 悠大は息をひそめて様子を伺っている。



「声がしたから上がったと思ったんだけど、まっ、いいか」


 嶺亜はそのまま去って行った。


 足音で嶺亜が居なくなったのを確認すると、悠大はホッとした。


 手が口から離れると、和也はじっと悠大を見つめた。



「ふーん。もしかして、姉ちゃんに気を使ったのか? 」

「え? 」

「俺が全裸でいたら、姉ちゃんすげぇ驚くだろう? 」

「そ、そうではない。だが、いくら家の中でも真っ裸で歩くものじゃないだろう? 」

「ん、まぁそうだけど。仕方ねぇじゃん、パンツ部屋に忘れてたし」

「だったら、誰かに取ってもらえばいいじゃないか」

「ふーん。姉ちゃんに頼んでいいのか? 俺のパンツ持って来てって」

「はぁ? 」


 悠大はなぜか赤くなった。

「何赤くなってんの? そんなに心配ならさっ、ちゃんと見てやれよ姉ちゃんの事」


 言われて悠大はハッとなった。


 何をこんなに慌てているのだろう? 
 何故、隠そうとしたのだろう?
 何も干渉していないのに、別に何ともない筈なのに…。


 複雑な気持ちが込みあがってきて、悠大は自分でも判らなくなった。


「ったく、相変わらず素直じゃないんだな」

 と、立ち上がり和也は脱衣所を出ようとした。

「ちょっと待て! そのまま行くな。私が持って来てやるから、ここにいるんだ」

「あ、そう? じゃあ頼むよ。ちなみに、パンツは一番奥からとってきてくれよっ」

「ったく…。分かった」

 
 去ってゆく悠大を見て、和也はニヤッと笑った。