男性と女性が、刺されて床に倒れた。
血の付いた包丁を持った芹那が、男性と女性を見下して佇んでいる。
ピンポーン。
チャイムが鳴った。
芹那はサッとその場から去った。
カチャッとドアを開けて1人の男が入って来た。
「ヒーッ! 」
倒れている男性と女性を見て、男は驚き腰を抜かしてその場にしゃがみこんだ。
遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。
腰を抜かして逃げたくても逃げれない男。
暫くして、警察官が入って来た。
男は有無も言わさず連れて行かれた。
外で隠れていた芹那は不敵に笑い、返り血を浴びた男性用のコートをごみ箱に捨てて去って行った。
「こ、こんなの見せて。なに? あの2人を殺した犯人は、捕まっているのよ! 」
「そう。誤認逮捕だけどね」
「誤認逮捕って、警察はあの男が犯人だって言ったのよ! 」
「その時はね。でも今は、誤認逮捕だってちゃんと分かったようだよ。だから、あの男の人は釈放されているよ。あの人は、ただ、用があって来た来客だったって証明されたんだって。ある人が、ちゃんと証拠を持っていたようだよ」
芹那はある人と聞いてピンときたようだ。
「またあの子ね…余計な事ばかりして…」
「余計なことしているのは、あんたじゃん」
「はぁ? 私が? 」
和也はフッとため息をついた。
「あんた、寂しい人なんだね」
「私が? 何を言ってるの? 」
和也は芹那の顔を覗き込んだ。