「自転車どうするの?」
「明日取りに行くよ」
病院の駐輪場に置いておけば、一晩くらい平気だろう。
「そう」

なかなか会話が続かない。



タクシーは15分ほど走って自宅に到着。

俺は家の中まで荷物を運ぶ。

「荷物、ここでいいか?」
「うん。ありがとう」

しかし、
ガタッ。
松葉杖が滑って転びそうになった。

危ないなあ。
「本当に大丈夫か?」

思わず手を出した俺に、
コクンと頷く愛瑠萌だけれど・・・
全然大丈夫なんかじゃない。

肩を振るわせ、
ウッ、ウウッ、
嗚咽が漏れる。

俺はギュッと背中から抱きしめた。

「泣け。無理するな」

「わぁー。ああぁ-」
声を上げて泣き出す愛瑠萌。

しばらくそうしていた。



「リュウ、もう大丈夫だから」
愛瑠萌が俺の手を剥がす。

疲れきった顔で、でも真っ直ぐに俺を見る目力はいつもの愛瑠萌のもの。
もう大丈夫。
相変わらず、愛瑠萌は強い子だ。

それから冷蔵庫の残り物で一緒に食事をとり、俺は帰宅した。