翌朝、真奈のお母さんから連絡があった。

「昨日から体調が悪くて、夜中に発作を起こしたの」
「えっ?どんな具合なんですか?」

「うん、意識がはっきりしないの」
ええ。

俺はなぜ・・・
昨日連絡がないまま放っておいたんだ。
もしも、もしもこのまま真奈に会えなくなったら、俺は自分を許せないだろう。

すぐに病院へ向かおうと思った。
しかし、
「今は落ち着いているから、リュウ君学校に行きなさい。真奈もその方が嬉しいはずだから」
と言われ、俺は学校へ行くことにした。

普通に授業を受け、放課後の部活にも向かう。
それが今俺のなすべき事に思えた。

それに、最後の大会まであと1週間切っている。
さすがに休むわけにはいかない。

しかし、上の空状態の俺。
いつも通りの練習をこなし、体育館を歩いていると、

「キャーッ」
女子の悲鳴が響いた。

えええ?
やばっ。

どうやら、俺が跳馬の助走路を横切ってしまったらしい。
すでに助走を始めていた女子が、慌ててセイフティーマットに倒れ込む。

「ごめんごめん」
すぐに謝ったが、
「フラフラして人の邪魔するなら出て行けっ」
監督に怒鳴られて、体育館を出されてしまった。
一体何をやってるんだ。



仕方なく、真奈の病院へ向かった俺。

静まりかえって病室で、真奈は眠っていた。
点滴につながれ、鼻には酸素チューブ。
意識のない真奈を見ながら、自分の不甲斐なさを呪った。

今、俺は学校にも行けて部活も出来る。
何の不満があるんだ。
何を悩むんでいるだ。
今しか出来ないことが目の前にあるのに、なぜしないんだ。
俺は何て意気地なしなんだ。

目を開けることのない真奈を前に、悶々と時間を過ごすことしか出来なかった。