帰り道。
松葉杖にも大分慣れた様子で歩く愛瑠萌。

「ばあちゃんは?」
帰りも迎えにきているはずだ。

「うん。かなり歩けるようになったから、もういいですって言った」
テへへと笑顔で言う。

「そうか」
お年頃の愛瑠萌は遠慮だってするってことか。

「ねえ、アイス食べたい」
はあ?
いきなりだなあ。

体操をしている女子はみんな体重制限をしている。
それは単なるダイエットだったり、見栄えのためって事ではない。
体重が増えればそれだけ怪我のリスクが上がるから、体操選手はみんな自分の体重を必死に管理する。

「リュウは大会前だから、イヤかなあ?」
「別に、いいよ」

元々細身の俺は、あまり体重を気にしていない。
それに、体重を気にするほどの有力選手でもない。


俺たちは、近くのコンビニでアイスを買って公園へ向かった。

久しぶりに乗ったブランコ。
アイスをかじりながら、遠くを見つめる愛瑠萌。
いつもより表情が険しい。

「どうかしたのか?」
「うん・・・大学の推薦がダメになった」
「・・・」
何も言えない。

「ごめん」
愛瑠萌の目からポロッと涙がこぼれた。

今怪我をすれば、推薦の話が消える。
かわいそうだけれど、不思議な話ではない。
でも、俺は愛瑠萌がどれだけ頑張ってきたかを知っている。
だからこそ、かける言葉がない。

ゆっくりとブランコを揺らしながら、涙をぬぐう愛瑠萌。

暗くなるまで、公園で過ごした。

「リュウありがとう。少しすっきりした」
「うん」
俺には何も出来ない。