ギラギラ光太陽っていうのはどうにも好きにはならない。

 僕——北見 春樹(きたみ はるき)は暑いのが苦手だ。今の時期は、6月の中旬と言うのに暑いのだ。僕は大きくため息をした。

「朝っぱらからそんなでけぇため息すんなよ。こっちの気分が悪くなったまうだろうが」

 僕の隣でそんな事を言っているのは、東方 冬馬(ひがしかた とうま)だ。こいつとは小学生の頃から親友だ。

「んな事言ってもよー、暑いもんは暑いもんは暑いんだよ」

「出たよ、春樹の暑がり」

 冬馬は夏大好き人間だ。名前に冬って付いているのに冬は大が付くほど嫌いなのだ。
 
「いいじゃんか、夏ってのはよ」

 バシッと冬馬は僕の背中を思い切り叩いた。

「いだっ」

 背中がひりひりする。

 冬馬はバスケ部だ。今日は朝練がないらしく、僕と一緒に登校している。

「そうだそうだ、これを忘れるところだった」

 冬馬はバックから何かを探して「あった」と言ってバックからチラシを受け取った。

「これは…」

「これは大会だよ。応援してくれよなー」

「ああ、多分行くよ」

「絶対に来いよ!」

「はいはい」

 そんな事を喋りながら、学校に着き、僕たちは自分の靴箱に行き、靴から上靴に履き替えて、自分のクラスに入った。冬馬とは違うクラスで少し寂しい気がする。

 僕は自分の席に座り、バックに入っている物を全て出して、机の中に入れていると。

「おはよ、春樹くん」

 僕は視線を上げて言った。

「おはよ、夏帆(なつほ)」

 僕に挨拶したのは小学生の頃からの親友の西野 夏帆(にしの)だ。

「どうしたんだ?今日はご機嫌がいいみたいだけど」

「後もうちょっとで宿泊研修だよ?ワクワクして当然だよ!」

「僕は嫌だなー、大人数ってところが…って言っても分かんねーよな」

 僕は大人数より少数派だ。大人数だったら、気をつかってしまうが、少数でいると全く気をつかわずに済むから楽なのだ。

「それよりも今度の土曜に冬馬の試合らしいぞ」

「まじ?」

「おおまじだ」

 夏帆は少し考えて言った。

「行けたら行くって伝えといて」

「分かった」

 夏帆は僕に手を振って、自分の席に向かった。


 時刻を見ると後5分ちょっとでホームルームが始まろうとしていた。

「話をしよう」

 僕に話しかけてきたのは僕の隣の席の北村 奈々(きたむら なな)。女子のカーストの1番上に君臨し、何故か僕にちょっかいばかりかけてくる。

「嫌だ」

「えーーなんでよ」

「話題がないだろ?」

「あ、あるもん!」

「うるさいぞ、さっさと席につきなさい」

 そう言って、入ってきたのはこのクラスの担任だ。
 
 救いの手が差し伸ばされた感じだ。

 そして、ホームルームが終わり、授業が始まった。

「速く終わんねぇーかな」

 ボケーーッとしながら、左耳から右耳に流していた。

 時間とは面倒臭いと思う時はゆっくり感じて、楽しいと思う時は速く感じらのだろうか。とても、不思議で不思議で仕方がない。


 昼休み、僕は教室で1人で弁当を食べていた。

「ねぇー、一緒に食べよ?」

 突然、話しかけられて驚いてしまった。

「嫌だ」

 声で誰か分かり、顔を見ずに断った。

「なんで、友達とご飯食べるだけなのに無理なのよ」

 文句を言いつつ、僕の机に弁当を置いて、自分の椅子に座った。

「春樹くんは我儘なんだから…全くもう…あ!それおいしそー」

「お、おい!僕のおかず取るなよ!」

「いいじゃんか、減るもんじゃないんだからさ?」

「減るわ、僕のおかずがな!」

 奈々は口の中にある物をゴクリッと飲み込み言った。僕を煽るようにして。

「減らないわよ。私はね?」

「なっ!」

そして、また1つ僕のおかずが食べられた。

「そんなに嫌なの?こんな美少女に食べてもらっているのに?」

「自分で美少女って…」

「何よ!頭にきた!全部食べてやる!」

 奈々は僕の弁当箱を俊敏に取り、勢いよく、ご飯や唐揚げ、サラダなどを食べられた。

 僕は止めるにも勢いで圧倒されられて、見ているだけだった。

「やっぱり、春樹くんのお弁当はおいしいよ」

 嵐みたいな奴だ。と毎日のように思いながら、弁当を片付けた。

 奈々は鼻歌を歌いながら、多分友達だと思う方に行って、楽しそうに話している。

「これでも食べる?」

「すまねぇーな、夏帆」

 夏帆は僕の机の上におにぎりを置いてくれた。

「大変だよね、毎日毎日」

「本当だよ。勘弁して欲しい」

「ってか、もう食べたの?」

「ああ、そうだ」

「相変わらず、食べるの速いよね。もう1個食べる?」

 僕は首を横に張って言った。

「いいよ。もうお腹いっぱいだがら」

「そうなんだ」

 昼休みは夏帆と雑談で終わり、次の授業の用意をしていたら「次、移動らしいよ」と夏帆が教えてくれて一緒に行った。

「どこだっけ?」

「視聴覚室だよ」

「おいおい、まじかよマイケル」

 バシッとまた、背中を叩かれた。今日で2回なんて悪運すぎやしないか。

「誰がマイケルよ。ってかマイケルって誰よ」

「知るか!適当に出てきたんだよ」

「友達を変なあだ名付けていいと思っているの?」

 僕の背後で誰かが囁いた。

「幽霊かお前は!」

「何?私を馬鹿にしてんの?」

 こいつは南見 秋奈(みなみ あきな)、僕の唯一の幼馴染みだ。
 
 秋奈は頭がいいし、運動神経も抜群だ。他人から見た秋奈はきっと優等生なのだろうが、こいつの本性はドSだ。優しさは30%でドSは70%だ。

「違う」

「本当に?」

「ああ」

「あっそう、夏帆ちゃん!このバカが変な事したら私にちゃんと言ってね?すぐに殴り飛ばしてあげるから」

 今の女の子ってこんなこと言わないのね?こいつらだけだよね?

「分かった」

 夏帆はにっこりと笑顔で言っていた。別に変な事していないけど、しないと心にまた誓った。

「もうそろそろ授業だから、また放課後」

「うん、また放課後」

秋奈は大きく手を振って教室に入った。

「僕たちも行こっか」

「うん」

なんとか授業には間に合った。