昼休みを終えるチャイムが鳴る。
本当は授業どころではないのだが、真面目な柚子の足は自然と教室へと向かった。
だが、案の定、授業中は上の空。
何がいけなかったのか。
家に連れていったのがそもそもの誤りなのか。
あの時何としても止めておくべきだったのか。
いや、花梨が家にいないことを確認しておけば良かったのか。
そんなとりとめのないことを考えるばかり。
「柚子。柚子ってば!」
はっと我に返る柚子。
いつの間にか午後の授業は終わっており、皆帰り支度や部活へと向かうべく教室内はざわざわとしていた。
「大丈夫?」
先程から声を掛けてくれていた友人に大丈夫だと笑いかけるが、やはりその顔は力ない。
ふと、視界の端に大和が教室から出ようとするのが映り、自然と大和を見つめていた。
視線を感じたのか、大和も柚子を見たことで互いの視線が合わさり、柚子はドキリとしたが、大和は何事もなかったように直ぐに視線をそらした。
そのことに、やはり昼休みの出来事は嘘ではなかったのだと実感させられる。
昨日までは、授業が終われば直ぐに柚子に話し掛けてきていたというのに。
別れを告げられるような素振りはなかった。
だから今回のことは青天の霹靂だった。
だが、よくよく考えてみれば、花梨に一目惚れして柚子と別れると決意したのは昨日今日の話ではないはず。
ならば、昨日までの大和は何を思って柚子に話し掛けていたのだろうか。
そんなことを考えていたせいで、目の前の人物をすっかり忘れていた。
「柚子?」
「……あっ、ごめん、透子」
はははっと、笑ってみせるが、目の前の友人は誤魔化されてはくれなかった。
眉をひそめてじっと柚子を見る。
「何があったの?」
「別に何もないよ」
「嘘!あんたと何年友達やってると思うのよ。ばればれの嘘吐くんじゃない。ほら、白状しろ!」
どう誤魔化そうかと視線をうろうろとさせるが、良い案は浮かんでこない。
そもそも、そんな誤魔化しも、この友人にはきっと通用しないのだろう。
柚子は観念して、昼休みの出来事を話した。