「これで本当に金もらったりなんかしたら、マジで違う話になっちゃうから、金はなしね。その代わり、俺もそれなりの相手しかしないけど、それでもいい?」
涼介は、少し伏し目がちにそう言った。
言いたいことは果てしなくあるが、これで契約がとれるなら、それでもいい。
俺は契約書を取り出す。
その紙とペンを前に、涼介はまたため息をついた。
「契約文化なのね。それは理解するけど、納得はできない」
「どういうことだ」
「義務にはしない」
「俺には義務なの!」
「義務じゃない、ふざけんな」
「ふざけてない!」
涼介は眉間にしわを寄せた額を、ゴツンと俺にぶつけた。
「オイ、コラ、いい加減にしろよ、この腐れ外道め」
「悪魔にとっちゃあ、最高のほめ言葉だな」
ぐりぐりと押しつけられる額に、俺も負けずに押し返す。
「ワケも分からず、保証人になるな、契約書にサインするなっていう、日本人の常識をしらんのか?」
「だから俺は、悪魔だっつってんだろーが」
「アラブの大富豪の設定はどうした?」
涼介の手が、俺の耳をつまみ引っ張りあげる。
「他に友達いないんだろ? だから適当な相手を選んで金で釣ろうってんだろうが。そういうの、みっともないからやめろ」
「そんなつもりはねぇよ!」
俺は涼介の耳を、同じようにひっぱりあげようとして、やめた。
「素直にそう言えば、考えてやらんこともないけどな。お前には無理だな」
「契約書が必要だ」
引っ張られてる耳が痛い。
だけど、俺にはそれを振り払うことが出来ない。
「その手を離せ」
涼介は、引っ張る手はそのままに、額を俺から離した。
そのままじっと俺を見ている。
「なんだよ。嫌なら抵抗すればいいじゃないか」
「やかましいわ」
涼介の目が、俺を見下ろす。
涼介の手が、もう片方の耳をつまんで引っ張った。
それを離したかと思うと、今度は頭に手を置き、ぐちゃぐちゃと髪をかき乱す。
俺は涼介にされるがまま、じっと耐えている。
「……。くだらねぇ」
涼介はため息をついて、手を離した。
乱れた髪を急いで直す。
つままれた耳が痛い。
「やっぱもう、お前とはしゃべんない。俺にも話しかけんな」
「なんでだよ!」
「うるせー、いま話しかけんなっつったろ」
涼介は机の下から教科書を取り出した。
「授業、始まるぞ」
チャイムが鳴る。
どれだけにらみつけても、涼介は完全に俺を無視している。
その真横では、俺によって席を奪われている女が、困ったような顔で立っていた。
俺は舌打ちして立ち上がると、教室を出る。
涼介は、少し伏し目がちにそう言った。
言いたいことは果てしなくあるが、これで契約がとれるなら、それでもいい。
俺は契約書を取り出す。
その紙とペンを前に、涼介はまたため息をついた。
「契約文化なのね。それは理解するけど、納得はできない」
「どういうことだ」
「義務にはしない」
「俺には義務なの!」
「義務じゃない、ふざけんな」
「ふざけてない!」
涼介は眉間にしわを寄せた額を、ゴツンと俺にぶつけた。
「オイ、コラ、いい加減にしろよ、この腐れ外道め」
「悪魔にとっちゃあ、最高のほめ言葉だな」
ぐりぐりと押しつけられる額に、俺も負けずに押し返す。
「ワケも分からず、保証人になるな、契約書にサインするなっていう、日本人の常識をしらんのか?」
「だから俺は、悪魔だっつってんだろーが」
「アラブの大富豪の設定はどうした?」
涼介の手が、俺の耳をつまみ引っ張りあげる。
「他に友達いないんだろ? だから適当な相手を選んで金で釣ろうってんだろうが。そういうの、みっともないからやめろ」
「そんなつもりはねぇよ!」
俺は涼介の耳を、同じようにひっぱりあげようとして、やめた。
「素直にそう言えば、考えてやらんこともないけどな。お前には無理だな」
「契約書が必要だ」
引っ張られてる耳が痛い。
だけど、俺にはそれを振り払うことが出来ない。
「その手を離せ」
涼介は、引っ張る手はそのままに、額を俺から離した。
そのままじっと俺を見ている。
「なんだよ。嫌なら抵抗すればいいじゃないか」
「やかましいわ」
涼介の目が、俺を見下ろす。
涼介の手が、もう片方の耳をつまんで引っ張った。
それを離したかと思うと、今度は頭に手を置き、ぐちゃぐちゃと髪をかき乱す。
俺は涼介にされるがまま、じっと耐えている。
「……。くだらねぇ」
涼介はため息をついて、手を離した。
乱れた髪を急いで直す。
つままれた耳が痛い。
「やっぱもう、お前とはしゃべんない。俺にも話しかけんな」
「なんでだよ!」
「うるせー、いま話しかけんなっつったろ」
涼介は机の下から教科書を取り出した。
「授業、始まるぞ」
チャイムが鳴る。
どれだけにらみつけても、涼介は完全に俺を無視している。
その真横では、俺によって席を奪われている女が、困ったような顔で立っていた。
俺は舌打ちして立ち上がると、教室を出る。