高校から趣味の延長で鉱物店にアルバイトで入り、大学在学中にウェブショップを運営し、夏季休暇には友人とタイや中国、インドやスリランカなどで宝石や天然石の市場に行き買付を行いながら会社を立ち上げた。

大学在学中、共同経営者だった友人がタイ人と結婚することとなり、大学を中退。会社は私に委譲されて、私は今それを仕事にしている。

私が取り扱っているのは主に原石や、ルース。パワーストーンとして扱われることの多い、ビーズ類も扱うことはあるがあまり数は多くない。クオリティも宝石商が扱うレベルはほぼなく、一般流通しているクオリティのものが多い。

部屋におかれている段ボールのほぼ半数は、海外から到着した天然石だったりする。

「はー。仕入れリストおわらなーい」

今月分の領収書も税理士さんに送らなければならないし、再来月にはイベントの出展も予定している。小規模とはいえそこそこ多忙な日々を送っているのだ。

「なんの石かわからないままだなぁ」

キラキラとした細やかな星の瞬きが太陽の中に明滅する美しい真紅の石。どんな図鑑にも、どんな業者にも、どんなサプライヤーに訪ねても「誰も知らない」「見たことのない石」だという。

この石に一体どのようないわれがあるのかはわからない。

ただ、とてつもなく長い時を経て代々御剣家(みつるぎけ)の直系の女子へと繋がれてきたのだという。

私はペンダントからそっと手を放し、もう一度スマホを確認する。

1年前眠るように息を引き取った祖母の笑顔をじっと見つめ、その下にパッと表示された時刻に私は軽く目を見張った。

「いちじ、じゅういっぷん・・・」

時刻は深夜、1時11分。

最近仕事がハードだったせいか、パソコンをしている途中でうっかり寝てしまったらしい。ここ数日、いつの間にか眠っている事態が多発しており、そろそろ規則正しい生活を送らねば、とは思っている。が。

「自営業なんてタイムカードないもんなー」

うーんと両手を大きく頭上にあげて背伸びをすれば、ごき、ばき、と間接が音を立てる。これは生体に行って整えてもらいたいレベルである。

「しょうがない。今日はお風呂入って寝よう。明日は忙しいし」

パソコンの画面を開いて、表示の内容を確認し、次々と保存をしていく。最近は画面に直接触ればサクサク保存が出来るのでとても便利だ。一昔前は、いちいちマウスを移動させて所定の方法で保存をしなければならなかった。

私は最後にパソコンのシャットダウンのボタンを押す。すると、すぐに画面が真っ黒になり、代わりに鏡のように自分のやや疲れた様子がおぼろげに映りこんだ。

直視できるものではなく、私は見なかったことにしてパソコンの画面を閉じる。