「へえ……」
私はその様子を見て、一人で感心していた。
ああやって自分からトラブル解決に動くなんて、さすが上村だ。上から期待されているだけのことはある。
上村は、新入社員の頃から頭一つ分飛び抜けてる印象だったけれど、本社を離れてる間にさらに成長したようだ。自分が将来の幹部候補として会社からも目をかけられていると、自覚があるのだろう。
「ところで三谷さん、上村くんとは話しました?」
そんなことを考えつつぼんやりしていたら、向かいの席に座る響子が話しかけてきた。
三杯目の酎ハイを半分ほど飲んだだけなのに、響子の目はもう据わっている。
思っていたより、お酒の回り方が早い。年度が替わったばかりで今週もバタバタしていたから、響子も疲れが溜まっているのかもしれない。
「ねー、三谷さぁん」
「もう酔っちゃった?」
「酔ってませんよぅ。何いってるんですか」
この様子じゃ、今日の響子は絡み酒になるだろう。
うんざりする気持ちを抑えつつ、彼女に答えた。
「いいえ、特に仕事で絡みもなかったし」
「どーしてですか!? 上村くんだって私同様、可愛い後輩でしょう?」
「どうしてって、別にそんな機会もなかっただけで……」
「わかりました! じゃあここに呼びますね。上村くーん!!」
「ちょっと、響子!」
大きな声で名前を呼ばれて、上村がこちらを振り向いた。
それに気づいた美奈子が、お酌をしていた手を止め、眉間に皺を寄せて私たちを睨みつける。
「もう、ホントにやめてったら!」
飲み会であんなに目立つやつと一緒にいたら、また女の子たちに余計な反感を買ってしまう。
なんとかして響子を黙らせようと、二人で押し問答をしていると、高いところから声が聞こえた。
「中山、……三谷先輩も。お久しぶりです」
「……久しぶりね、上村」
ああ、来てしまった。こうなったら、もう上村を無下にするわけにはいかない。
観念した私は、体を横にずらし、上村が座るスペースを作ってやった。
「三谷先輩、なんだかずいぶん印象が変わりましたよね」
「……そう?」
隣から話しかけてくる上村の顔も見ず、私はジョッキをぐいぐい呷った。
こんなやつと話しててもつまらない。そう思って早く元の席に戻らないかな。
向こうから私と響子を睨みつける美奈子を目の端で認めながら、私は心の中でそう思っていた。
「なんというか……見た目からして違う。昔はそんなひっつめ髪してなかったですよね?」
「こっちの方が仕事中に気合が入って好きなの」
私は、素っ気ない言い方をしてビールを飲み干すと、大皿の唐揚げをわざと乱暴に箸で突き刺した。
私はその様子を見て、一人で感心していた。
ああやって自分からトラブル解決に動くなんて、さすが上村だ。上から期待されているだけのことはある。
上村は、新入社員の頃から頭一つ分飛び抜けてる印象だったけれど、本社を離れてる間にさらに成長したようだ。自分が将来の幹部候補として会社からも目をかけられていると、自覚があるのだろう。
「ところで三谷さん、上村くんとは話しました?」
そんなことを考えつつぼんやりしていたら、向かいの席に座る響子が話しかけてきた。
三杯目の酎ハイを半分ほど飲んだだけなのに、響子の目はもう据わっている。
思っていたより、お酒の回り方が早い。年度が替わったばかりで今週もバタバタしていたから、響子も疲れが溜まっているのかもしれない。
「ねー、三谷さぁん」
「もう酔っちゃった?」
「酔ってませんよぅ。何いってるんですか」
この様子じゃ、今日の響子は絡み酒になるだろう。
うんざりする気持ちを抑えつつ、彼女に答えた。
「いいえ、特に仕事で絡みもなかったし」
「どーしてですか!? 上村くんだって私同様、可愛い後輩でしょう?」
「どうしてって、別にそんな機会もなかっただけで……」
「わかりました! じゃあここに呼びますね。上村くーん!!」
「ちょっと、響子!」
大きな声で名前を呼ばれて、上村がこちらを振り向いた。
それに気づいた美奈子が、お酌をしていた手を止め、眉間に皺を寄せて私たちを睨みつける。
「もう、ホントにやめてったら!」
飲み会であんなに目立つやつと一緒にいたら、また女の子たちに余計な反感を買ってしまう。
なんとかして響子を黙らせようと、二人で押し問答をしていると、高いところから声が聞こえた。
「中山、……三谷先輩も。お久しぶりです」
「……久しぶりね、上村」
ああ、来てしまった。こうなったら、もう上村を無下にするわけにはいかない。
観念した私は、体を横にずらし、上村が座るスペースを作ってやった。
「三谷先輩、なんだかずいぶん印象が変わりましたよね」
「……そう?」
隣から話しかけてくる上村の顔も見ず、私はジョッキをぐいぐい呷った。
こんなやつと話しててもつまらない。そう思って早く元の席に戻らないかな。
向こうから私と響子を睨みつける美奈子を目の端で認めながら、私は心の中でそう思っていた。
「なんというか……見た目からして違う。昔はそんなひっつめ髪してなかったですよね?」
「こっちの方が仕事中に気合が入って好きなの」
私は、素っ気ない言い方をしてビールを飲み干すと、大皿の唐揚げをわざと乱暴に箸で突き刺した。