「三谷さん、ここです。お呼び立てしてすみません」
「岩井田さん、お待たせしました」
終業時間を少し過ぎて、岩井田さんは直接私の携帯に連絡してきた。
岩井田さんが指定したのは、落ち着いた雰囲気の居酒屋だった。棚にずらりと地元の焼酎や日本各地の日本酒の瓶が並んでいる。
「ここで良かったかな。三谷さんの好みに合えばいいんだけど」
「焼酎も日本酒も好きですよ。お料理もおいしそうだし、楽しみです」
料理はお店のお任せにして、私と岩井田さんはとりあえずのビールで乾杯した。岩井田さんに勧められるまま、運ばれてくる料理に箸を伸ばす。どれも美味しくて、つい夢中になった。
「それで、本題なんだけど」
料理の半分ほどに箸をつけたところで、岩井田さんが話を切り出した。
「三谷さん、僕が将来独立を考えてるって話、覚えてるかな?」
「はい、建築家のお友達と……って話ですよね。それがどうかしたんですか?」
「実は資金面の目途が立って、早ければ来年にでも開業しようかと思ってるんだ。……そこで相談なんだけど、三谷さん僕について来る気はない?」
「わ、私がですか!?」
岩井田さんの唐突な話にびっくりした私は、口に含んでいたビールが喉でつかえ咳こんでしまった。
「大丈夫?」
「びっくりして……すみません。でも、どうして私を?」
驚く私に、少し目を細めて微笑むと、岩井田さんは口を開いた。
「オアシス部で三谷さんとご一緒させていただいて、あなただと思ったんです。考えてみていただけませんか? 僕たちには即戦力になる人間が必要なんだ」
「ちょ、ちょっと待ってください。突然すぎて何がなんだか……」
「もちろん今すぐ返事が欲しいわけじゃない。ゆっくり考えてくださって結構ですよ。正直言って僕達はゼロからのスタートだし、給料だってどれくらい払えるかまだわからない。でも、やりがいのある仕事であることは間違いないし、自分が頑張った分だけ見返りはあります」
いきいきとした表情で話をする岩井田さんのことが、とても眩しく思え、私は視線を落とした。
私だって、今の仕事にはそれなりのプライドを持って取り組んでいる。でも、仕事に対して、岩井田さんのような情熱を持っているかと問われると自信がない。
「岩井田さん、お待たせしました」
終業時間を少し過ぎて、岩井田さんは直接私の携帯に連絡してきた。
岩井田さんが指定したのは、落ち着いた雰囲気の居酒屋だった。棚にずらりと地元の焼酎や日本各地の日本酒の瓶が並んでいる。
「ここで良かったかな。三谷さんの好みに合えばいいんだけど」
「焼酎も日本酒も好きですよ。お料理もおいしそうだし、楽しみです」
料理はお店のお任せにして、私と岩井田さんはとりあえずのビールで乾杯した。岩井田さんに勧められるまま、運ばれてくる料理に箸を伸ばす。どれも美味しくて、つい夢中になった。
「それで、本題なんだけど」
料理の半分ほどに箸をつけたところで、岩井田さんが話を切り出した。
「三谷さん、僕が将来独立を考えてるって話、覚えてるかな?」
「はい、建築家のお友達と……って話ですよね。それがどうかしたんですか?」
「実は資金面の目途が立って、早ければ来年にでも開業しようかと思ってるんだ。……そこで相談なんだけど、三谷さん僕について来る気はない?」
「わ、私がですか!?」
岩井田さんの唐突な話にびっくりした私は、口に含んでいたビールが喉でつかえ咳こんでしまった。
「大丈夫?」
「びっくりして……すみません。でも、どうして私を?」
驚く私に、少し目を細めて微笑むと、岩井田さんは口を開いた。
「オアシス部で三谷さんとご一緒させていただいて、あなただと思ったんです。考えてみていただけませんか? 僕たちには即戦力になる人間が必要なんだ」
「ちょ、ちょっと待ってください。突然すぎて何がなんだか……」
「もちろん今すぐ返事が欲しいわけじゃない。ゆっくり考えてくださって結構ですよ。正直言って僕達はゼロからのスタートだし、給料だってどれくらい払えるかまだわからない。でも、やりがいのある仕事であることは間違いないし、自分が頑張った分だけ見返りはあります」
いきいきとした表情で話をする岩井田さんのことが、とても眩しく思え、私は視線を落とした。
私だって、今の仕事にはそれなりのプライドを持って取り組んでいる。でも、仕事に対して、岩井田さんのような情熱を持っているかと問われると自信がない。