本筋であるアーケード街から、斜めに伸びた細い路地に入る。しばらく行くと、どこかで見覚えのあるお店が見えた。
「上村、このお店……」
『リストランテ Hira』
上村が連れてきてくれたのは、オアシスタウンに二号店をオープンさせようと、上村がずっと交渉していたあのレストランだった。
「やっと客として来ることができました」
上村は私を振り返り、ようやく目を合わせて話してくれた。その表情はどこか誇らしげだ。
白い木製のドアを開け中に入ると、そろそろランチタイムは終わろうかという時間なのに、店内はまだまだお客さんでいっぱいだった。
「いらっしゃいませ、上村さん。お待ちしていましたよ」
上村と二人で案内されるのを待っていると、一人の若いシェフがこちらへ歩いてくるのが見えた。とても体格がよくて、ユニフォームを着ていなければ格闘家か何かと間違えるかもしれない。
「お忙しいのに無理言ってすみません、比良さん」
「いえいえ、来てくださって嬉しいですよ」
比良さんというそのシェフは、満面の笑みで上村に握手を求めた。上村も笑顔でそれに応じている。
「こちらは同じオアシスタウン事業部の三谷です。先輩、こちらはリストランテHiraの二号店をやってくださる比良 保さん。こちらにいらっしゃる前は、東京の帝都ホテルで修業なさってたんですよ」
「はじめまして、三谷と申します。すごいですね、帝都ホテルにいらしたなんて」
「比良です、どうぞよろしく。そんな、すごいだなんて」
私が驚くと、比良さんは慌てたように顔の前で手を振った。大きな体を精一杯小さくして、立派な眉を下げる姿に親しみが湧く。
比良さんは、有名店のシェフだというのにどこにも気取ったところのない人だった。
「上村、このお店……」
『リストランテ Hira』
上村が連れてきてくれたのは、オアシスタウンに二号店をオープンさせようと、上村がずっと交渉していたあのレストランだった。
「やっと客として来ることができました」
上村は私を振り返り、ようやく目を合わせて話してくれた。その表情はどこか誇らしげだ。
白い木製のドアを開け中に入ると、そろそろランチタイムは終わろうかという時間なのに、店内はまだまだお客さんでいっぱいだった。
「いらっしゃいませ、上村さん。お待ちしていましたよ」
上村と二人で案内されるのを待っていると、一人の若いシェフがこちらへ歩いてくるのが見えた。とても体格がよくて、ユニフォームを着ていなければ格闘家か何かと間違えるかもしれない。
「お忙しいのに無理言ってすみません、比良さん」
「いえいえ、来てくださって嬉しいですよ」
比良さんというそのシェフは、満面の笑みで上村に握手を求めた。上村も笑顔でそれに応じている。
「こちらは同じオアシスタウン事業部の三谷です。先輩、こちらはリストランテHiraの二号店をやってくださる比良 保さん。こちらにいらっしゃる前は、東京の帝都ホテルで修業なさってたんですよ」
「はじめまして、三谷と申します。すごいですね、帝都ホテルにいらしたなんて」
「比良です、どうぞよろしく。そんな、すごいだなんて」
私が驚くと、比良さんは慌てたように顔の前で手を振った。大きな体を精一杯小さくして、立派な眉を下げる姿に親しみが湧く。
比良さんは、有名店のシェフだというのにどこにも気取ったところのない人だった。