「美奈子、今回は本気だったんです。選ばれるために資格も取るって言って勉強始めたりして、彼女なりに頑張ってたんです」
「……美奈子が?」
「三谷さんに、私たちのなにがわかるって言うんですか? 欠点ばっかりあげつらって、一人ひとりのことちゃんと見ようともしないくせに。一方的に偉そうなことばっかり言わないでください!!」
毅然とそう言い放つと、彼女たちは振り返りもせず給湯室を出て行った。
一人取り残された給湯室で、私は愕然としていた。
「……いけない。部長のお茶、入れなきゃ」
茶筒を取ろうと棚に手を伸ばした途端、肩を鈍い痛みが襲った。今頃になって、肩に食い込むほど強かった美奈子の指の感触が蘇ってくる。
彼女たちの変化を、私は全く気付いていなかった。資格を取ることを考えるくらいなら、普段の仕事への取り組み方も変わってきていたはずだ。
――それに、上村のあの視線。
今回のトラブルの原因は、完全に私だと思われている。
上村の冷ややかな表情を思い出すだけで、胸がズキズキと痛んだ。
私は、自惚れていたのかもしれない。
自分はいっぱしに仕事の出来る、会社にとっても役に立つ人間であると、いつの間にかそう思い込んでいた。
……上村のこともそうだ。
少しずつ一緒に過ごす時間が増えて、何も言わなくてもお互いの性格も何もかも分かり合っているつもりになっていた。
実際はどう? 私の目は節穴だ。
自分を嫌悪する気持ちが、嵐のように押し寄せてきて、先ほどの異動話によってもたらされた喜びと自信は、もうすっかりどこかに消え失せていた。
「……美奈子が?」
「三谷さんに、私たちのなにがわかるって言うんですか? 欠点ばっかりあげつらって、一人ひとりのことちゃんと見ようともしないくせに。一方的に偉そうなことばっかり言わないでください!!」
毅然とそう言い放つと、彼女たちは振り返りもせず給湯室を出て行った。
一人取り残された給湯室で、私は愕然としていた。
「……いけない。部長のお茶、入れなきゃ」
茶筒を取ろうと棚に手を伸ばした途端、肩を鈍い痛みが襲った。今頃になって、肩に食い込むほど強かった美奈子の指の感触が蘇ってくる。
彼女たちの変化を、私は全く気付いていなかった。資格を取ることを考えるくらいなら、普段の仕事への取り組み方も変わってきていたはずだ。
――それに、上村のあの視線。
今回のトラブルの原因は、完全に私だと思われている。
上村の冷ややかな表情を思い出すだけで、胸がズキズキと痛んだ。
私は、自惚れていたのかもしれない。
自分はいっぱしに仕事の出来る、会社にとっても役に立つ人間であると、いつの間にかそう思い込んでいた。
……上村のこともそうだ。
少しずつ一緒に過ごす時間が増えて、何も言わなくてもお互いの性格も何もかも分かり合っているつもりになっていた。
実際はどう? 私の目は節穴だ。
自分を嫌悪する気持ちが、嵐のように押し寄せてきて、先ほどの異動話によってもたらされた喜びと自信は、もうすっかりどこかに消え失せていた。