給湯室に続く廊下を歩いていると、コーヒーメーカーのコポコポという音と香ばしい香りが漂ってきた。さらに近付くと、ボリュームを押さえてはいるけれど、感情的な女性の声が漏れ聞こえてくる。
「どうして三谷さんなの? あんな人より美奈子の方がよっぽど仕事捌けるのに!」
「ホントだよ。絶対おかしいって。そうだ! 今から人事部に抗議に行く?」
この声は、美奈子と彼女の取り巻きたちだ。
でも、声を荒げているのは取り巻きの子たちばかりで、美奈子は一切口を挿まない。
美奈子は、彼女たちの話をどう思って聞いてるんだろう。
「そういえばさ、あの人と野々村部長って怪しくない? 部長っていつも三谷、三谷ってうるさいじゃん」
「えーっ、じゃあ今度の抜擢も身体を使ってってこと!?」
「そうなんじゃない? ねえ……」
「いい加減にして」
私は給湯室の入り口に立ち、うろたえる彼女たちを睨みつけた。
二人の後ろに、腕を組み壁にもたれて私を見据える美奈子がいた。その瞳からは何の表情も読み取ることはできない。
「あなたたち、姿が見えないと思ったらこんなところで優雅にコーヒー? さっさと業務に戻りなさい」
彼女たちの幼稚な考えに反吐が出る。よりにもよって、私と部長の関係を疑うだなんて。本当にどうかしている。
「そのたくましい想像力をもっと仕事に活かしたら? なにかあるたび文句ばっかり。本当にうんざりだわ」
私の言葉に、美奈子がギリギリと唇を噛み締めた。
「悔しかったら仕事で見返しな――」
「うるさいっ!」
ドン! と胸に強い衝撃が走った。私の言葉に激昂したのか、美奈子が私の胸を強く押したのだ。
その衝撃に驚いてバランスを崩した私は、そのまま床に尻餅をついた。
「……痛たっ! 美奈子、なんてことするのよ!」
「うるさいわね!!」
再び美奈子が私に向かって両腕を振り上げた。倒れたままの私に馬乗りになり、激しく肩を揺さ振ってくる。
「ちょっ……と、やめて! やめなさい美奈子!!」
「うるさいうるさいうるさい! 私だって、ちゃんと仕事してるわよっ!!」
「言われたことだけやるのが補佐の仕事じゃないわよ」
いきなり乱暴にされたことも、美奈子の甘い考え方も本当に頭にくる。
カッとなった私は、思わず自分の体に跨る美奈子を突き飛ばしていた。
「どうして三谷さんなの? あんな人より美奈子の方がよっぽど仕事捌けるのに!」
「ホントだよ。絶対おかしいって。そうだ! 今から人事部に抗議に行く?」
この声は、美奈子と彼女の取り巻きたちだ。
でも、声を荒げているのは取り巻きの子たちばかりで、美奈子は一切口を挿まない。
美奈子は、彼女たちの話をどう思って聞いてるんだろう。
「そういえばさ、あの人と野々村部長って怪しくない? 部長っていつも三谷、三谷ってうるさいじゃん」
「えーっ、じゃあ今度の抜擢も身体を使ってってこと!?」
「そうなんじゃない? ねえ……」
「いい加減にして」
私は給湯室の入り口に立ち、うろたえる彼女たちを睨みつけた。
二人の後ろに、腕を組み壁にもたれて私を見据える美奈子がいた。その瞳からは何の表情も読み取ることはできない。
「あなたたち、姿が見えないと思ったらこんなところで優雅にコーヒー? さっさと業務に戻りなさい」
彼女たちの幼稚な考えに反吐が出る。よりにもよって、私と部長の関係を疑うだなんて。本当にどうかしている。
「そのたくましい想像力をもっと仕事に活かしたら? なにかあるたび文句ばっかり。本当にうんざりだわ」
私の言葉に、美奈子がギリギリと唇を噛み締めた。
「悔しかったら仕事で見返しな――」
「うるさいっ!」
ドン! と胸に強い衝撃が走った。私の言葉に激昂したのか、美奈子が私の胸を強く押したのだ。
その衝撃に驚いてバランスを崩した私は、そのまま床に尻餅をついた。
「……痛たっ! 美奈子、なんてことするのよ!」
「うるさいわね!!」
再び美奈子が私に向かって両腕を振り上げた。倒れたままの私に馬乗りになり、激しく肩を揺さ振ってくる。
「ちょっ……と、やめて! やめなさい美奈子!!」
「うるさいうるさいうるさい! 私だって、ちゃんと仕事してるわよっ!!」
「言われたことだけやるのが補佐の仕事じゃないわよ」
いきなり乱暴にされたことも、美奈子の甘い考え方も本当に頭にくる。
カッとなった私は、思わず自分の体に跨る美奈子を突き飛ばしていた。