「三谷先輩、聞きました? 新プロジェクトのこと」
「うん、聞いてる」
永遠に降り止まないかと思っていた雨が、今日は止んだ。
梅雨の中休みに入ったのだろうか。久しぶりに雲間から覗く太陽が眩しい。
しかし蒸し暑さは相変らずで、私は額に浮かぶ汗をハンカチで押さえた。
「たまには外にランチいきましょう」と響子に誘われ、私たちは会社がある大通りから少し路地を入ったところにあるカフェまでやって来た。
響子は梅雨の間は特に偏頭痛がひどいと言っていたから、ただの気晴らしかと思ったら、それだけじゃないみたいだ。どうやら私に話したいことがあるらしい。
「新プロジェクトって、ショッピングモール建設のやつでしょ。それがどうかしたの?」
響子はお冷を一口飲むと、心持ち私の方に体を寄せた。
「そのプロジェクトのために各部署から数名引っ張って、新しい部署を立ち上げるらしいんですけど…」
その話なら私も知っていた。今回のプロジェクトには会社も相当力を入れているらしく、メンバーに選ばれてプロジェクトを成功させれば、幹部候補への道が開けるのではないかと男性社員たちが噂していた。
「それが、補佐として女子社員も何人か引っ張るらしいんですよ」
「へえ、それは初耳」
「それで、美奈子がまた張り切っちゃって。何でもうちの部からは上村くんでほぼ決まってるみたいで」
「美奈子が上村の補佐を狙ってるってこと?」
「そういうことです!」
身を乗り出し気味でそう言うと、響子はフォークに巻きつけたパスタをパクリと一口で食べた。
「美奈子、自分が選ばれるって信じてるんですよ。図々しいと思いません? 大した仕事もしてないくせに」
「響子、悪口が言いたくてわざわざランチに出たの?」
「違いますよ。私はただ、三谷さんが選ばれたらいいなあって思って」
「はあ? なんで私が?」
「だって、うちの部で一番仕事ができるのは三谷さんじゃないですか。それを差し置いて自分がだなんて、美奈子ってほんと図々しい」
……結局、響子は美奈子が選ばれるのが嫌なだけなんじゃないの?
そう思ったけれど、敢えて口に出さずにおいた。
「うん、聞いてる」
永遠に降り止まないかと思っていた雨が、今日は止んだ。
梅雨の中休みに入ったのだろうか。久しぶりに雲間から覗く太陽が眩しい。
しかし蒸し暑さは相変らずで、私は額に浮かぶ汗をハンカチで押さえた。
「たまには外にランチいきましょう」と響子に誘われ、私たちは会社がある大通りから少し路地を入ったところにあるカフェまでやって来た。
響子は梅雨の間は特に偏頭痛がひどいと言っていたから、ただの気晴らしかと思ったら、それだけじゃないみたいだ。どうやら私に話したいことがあるらしい。
「新プロジェクトって、ショッピングモール建設のやつでしょ。それがどうかしたの?」
響子はお冷を一口飲むと、心持ち私の方に体を寄せた。
「そのプロジェクトのために各部署から数名引っ張って、新しい部署を立ち上げるらしいんですけど…」
その話なら私も知っていた。今回のプロジェクトには会社も相当力を入れているらしく、メンバーに選ばれてプロジェクトを成功させれば、幹部候補への道が開けるのではないかと男性社員たちが噂していた。
「それが、補佐として女子社員も何人か引っ張るらしいんですよ」
「へえ、それは初耳」
「それで、美奈子がまた張り切っちゃって。何でもうちの部からは上村くんでほぼ決まってるみたいで」
「美奈子が上村の補佐を狙ってるってこと?」
「そういうことです!」
身を乗り出し気味でそう言うと、響子はフォークに巻きつけたパスタをパクリと一口で食べた。
「美奈子、自分が選ばれるって信じてるんですよ。図々しいと思いません? 大した仕事もしてないくせに」
「響子、悪口が言いたくてわざわざランチに出たの?」
「違いますよ。私はただ、三谷さんが選ばれたらいいなあって思って」
「はあ? なんで私が?」
「だって、うちの部で一番仕事ができるのは三谷さんじゃないですか。それを差し置いて自分がだなんて、美奈子ってほんと図々しい」
……結局、響子は美奈子が選ばれるのが嫌なだけなんじゃないの?
そう思ったけれど、敢えて口に出さずにおいた。