上村とこうやってまともに話をするのは、ほぼ三年ぶり。それも業務上のことがほとんどで、プライベートな話なんてしたことがない。
いいやつだとは思うけれど、本当に彼のことを信用しても大丈夫だろうか?
「口外はしません、約束します」
上村は酔いを少しも感じさせない強い瞳で私を見た。
「……わかったわ。私の負けよ」
私は潔く負けを認め、自分のスツールに腰を下ろした。
飲み慣れない強い酒のせいでまだ顔が熱い。
本格的に酔いが回り始めたのか、頭がくらくらする。堪えきれなくて思わず目を閉じると、上村がバーテンダーに何かをオーダーする声が聞こえた。
「お待たせしました」
バーテンダーはしなやかな動きで、背の高い華奢なグラスを私の目の前に置いた。
「これは何?」
「大丈夫、お酒じゃありませんよ。ピンクグレープフルーツのジュースです。酔い覚ましにもいいんですよ」
「……へえ。上村、詳しいのね」
「これでも一応飲料部にいましたからね。だいぶ勉強させられました」
上村はそう言って、目を細めて笑った。
私は淡いピンクのかわいらしいドリンクに手を伸ばした。
口に含むとシャリっとした、細かい氷を食べているような食感がした。適度な酸味と果実のほのかな甘さが舌で溶け、喉を滑り落ちていく。冷たさが、酔いで火照った体に心地いい。
「これ、とっても美味しいわ」
「良かった」
キンと冷えたジュースのおかげで、少しだけ酔いも覚めた気がする。
私は、グラスを置くと一度大きく深呼吸した。
「さっきの話だけど……上村が聞いてる話は、本当じゃない。彼はたぶん、嵌められたの」
「どういうことですか?」
上村はスツールごと体を捻ると、隣に座る私の方へと向きを変えた。
「あのね……」
エネルギー事業部のエースこと鳴沢幸二とは、同期入社だった。
仕事も出来るし、人当りも良い彼はとにかくモテて、給湯室や更衣室でも、よく女の子たちの話題に上っていた。
順調に出世街道を進み、華やかな彼と地味で目立たない私とは、同期という以外に接点なんてなかったし、おそらく今後も関わることはないだろうと思っていた。
それがある時、私は彼と同じ社内委員会に入ることになった。
委員会は部署を跨いでの活動で、年の近いメンバーが多く、皆仲が良かった。
そのことをきっかけに、会えば挨拶を交わす程度だった彼とも、少しずつだけれど話をするようになった。
いいやつだとは思うけれど、本当に彼のことを信用しても大丈夫だろうか?
「口外はしません、約束します」
上村は酔いを少しも感じさせない強い瞳で私を見た。
「……わかったわ。私の負けよ」
私は潔く負けを認め、自分のスツールに腰を下ろした。
飲み慣れない強い酒のせいでまだ顔が熱い。
本格的に酔いが回り始めたのか、頭がくらくらする。堪えきれなくて思わず目を閉じると、上村がバーテンダーに何かをオーダーする声が聞こえた。
「お待たせしました」
バーテンダーはしなやかな動きで、背の高い華奢なグラスを私の目の前に置いた。
「これは何?」
「大丈夫、お酒じゃありませんよ。ピンクグレープフルーツのジュースです。酔い覚ましにもいいんですよ」
「……へえ。上村、詳しいのね」
「これでも一応飲料部にいましたからね。だいぶ勉強させられました」
上村はそう言って、目を細めて笑った。
私は淡いピンクのかわいらしいドリンクに手を伸ばした。
口に含むとシャリっとした、細かい氷を食べているような食感がした。適度な酸味と果実のほのかな甘さが舌で溶け、喉を滑り落ちていく。冷たさが、酔いで火照った体に心地いい。
「これ、とっても美味しいわ」
「良かった」
キンと冷えたジュースのおかげで、少しだけ酔いも覚めた気がする。
私は、グラスを置くと一度大きく深呼吸した。
「さっきの話だけど……上村が聞いてる話は、本当じゃない。彼はたぶん、嵌められたの」
「どういうことですか?」
上村はスツールごと体を捻ると、隣に座る私の方へと向きを変えた。
「あのね……」
エネルギー事業部のエースこと鳴沢幸二とは、同期入社だった。
仕事も出来るし、人当りも良い彼はとにかくモテて、給湯室や更衣室でも、よく女の子たちの話題に上っていた。
順調に出世街道を進み、華やかな彼と地味で目立たない私とは、同期という以外に接点なんてなかったし、おそらく今後も関わることはないだろうと思っていた。
それがある時、私は彼と同じ社内委員会に入ることになった。
委員会は部署を跨いでの活動で、年の近いメンバーが多く、皆仲が良かった。
そのことをきっかけに、会えば挨拶を交わす程度だった彼とも、少しずつだけれど話をするようになった。