「それで見兼ねた麻倉さんがヘルプに入ったんですよ。二人掛りで初代オーナーを説得して、なんとか契約にこぎつけたんです」
「え、そうなんですか?」
 ――あの上村が、麻倉さんのヘルプを受けいれた?
あまり表に見せることはないけれど、上村の仕事に対するプライドは人一倍強い。そんな彼が、麻倉さんと組んでいたなんて。
てっきり、リストランテHiraに関しては、上村一人の成果だと思いこんでいた。
「まあ、部長もここの獲得にはかなり力入れてたし、なんとかしてOK貰いたかったんでしょうね」
「そうなんですか……」
 ……ショックだった。麻倉さんは、仕事でも上村のパートナーだったのだ。
 ――それに引き換え、私は?
プライベートでも上村に助けられて、仕事でだって上村や他の営業社員たちをアシストするだけで、彼らと肩を並べているわけじゃない。
私と上村は、対等じゃない。
「三谷さん、どうかされました?」
「あ、すみません。ぼうっとして。ちょっと食べ過ぎちゃったかな」
 私の作り笑いに、岩井田さんは気がついてしまっただろうか。
「それじゃあそろそろ出ましょうか」
 その後の岩井田さんは、いつもより言葉少なだった。