「上村くんと――、あれはコンサルの麻倉さん?」
……本当だ。今まさに、店の入り口に立って客席への案内を待っているのは上村と麻倉さんだった。
嫌だ。どうしてあの二人が?
岩井田さんと一緒にいるところを上村に見られたくなくて、私は咄嗟に入り口から背を向けた。
「三谷さん、どうかされ――」
「こんにちは、岩井田さんに三谷先輩。今日は、デートですか?」
どうやら、遅かったらしい。私たちがいることに気がついた上村と麻倉さんが、案内の人を待たずにこちらののテーブルまでやって来た。
「やあ、上村くんに麻倉さんまで。君たちはこれから食事?」
「先に映画を観てきたんで、遅くなってしまったんです。三谷さん、こんにちは」
「こんにちは」
声をかけてくれた麻倉さんに、無理やりに笑顔を作った。……私はちゃんと笑えているだろうか。
映画に行って、レストランで食事なんて、まるでデートじゃない。そう考えてハタと気が付いた。
……そうか、この二人付き合ってるんだ。
「いやあ、上村くんの言うとおりだったよ。料理もサービスも申し分ない。ここはかなり期待できるんじゃないかな」
「そうでしょう? 必ずオアシスタウンでも人気店にしてみせますよ」
岩井田さんにそう誇らしげに返したのは、上村ではなく麻倉さんだった。麻倉さんが直接テナントの担当を持つことはないはずなのに、どうしてこんなことを言うのだろう?
「そういえばお二人とも、二号店のオーナーにはお会いになりました? 保さんっておっしゃるんですけど、研究熱心で素晴らしい方なんですよ」
麻倉さんもオーナーに会ったことがあるんだ。……ひょっとして、以前にも上村と一緒に?
「うん、先ほどご挨拶させてもらったよ実はこれからデザートの試食をさせてもらうんだ」
「わあ、いいですね。私達もお願いしてみようかな。ね、上村さん」
親しげに上村に話しかける麻倉さんの姿に、胸がチクリと痛む。
「うん、まあ……とりあえず、俺らも席に着こうか」
少し前から、ホール担当の女性がすぐ側で待機していた。上村が女性とアイコンタクトを取ると、それに気が付いた麻倉さんが上村の腕を取る。
「それじゃあ失礼します」
「ええ、また……」
私は黙ったまま、二人が奥の個室に案内されるのを見送った。あれは、前に私と上村が一緒に食事をした席だ。
「驚いたね、あの二人プライベートでもここに来てるんだ」
「え、どういうことですか?」
「あれ、三谷さんは知らないのかな。上村くん、ここの契約取るのずいぶん苦労してたでしょう」
「ええ、……それは上村から聞いてます」
あの時、上村は珍しく私に弱音を吐いた。と言ってもほんの一瞬だけだったけれど。
……本当だ。今まさに、店の入り口に立って客席への案内を待っているのは上村と麻倉さんだった。
嫌だ。どうしてあの二人が?
岩井田さんと一緒にいるところを上村に見られたくなくて、私は咄嗟に入り口から背を向けた。
「三谷さん、どうかされ――」
「こんにちは、岩井田さんに三谷先輩。今日は、デートですか?」
どうやら、遅かったらしい。私たちがいることに気がついた上村と麻倉さんが、案内の人を待たずにこちらののテーブルまでやって来た。
「やあ、上村くんに麻倉さんまで。君たちはこれから食事?」
「先に映画を観てきたんで、遅くなってしまったんです。三谷さん、こんにちは」
「こんにちは」
声をかけてくれた麻倉さんに、無理やりに笑顔を作った。……私はちゃんと笑えているだろうか。
映画に行って、レストランで食事なんて、まるでデートじゃない。そう考えてハタと気が付いた。
……そうか、この二人付き合ってるんだ。
「いやあ、上村くんの言うとおりだったよ。料理もサービスも申し分ない。ここはかなり期待できるんじゃないかな」
「そうでしょう? 必ずオアシスタウンでも人気店にしてみせますよ」
岩井田さんにそう誇らしげに返したのは、上村ではなく麻倉さんだった。麻倉さんが直接テナントの担当を持つことはないはずなのに、どうしてこんなことを言うのだろう?
「そういえばお二人とも、二号店のオーナーにはお会いになりました? 保さんっておっしゃるんですけど、研究熱心で素晴らしい方なんですよ」
麻倉さんもオーナーに会ったことがあるんだ。……ひょっとして、以前にも上村と一緒に?
「うん、先ほどご挨拶させてもらったよ実はこれからデザートの試食をさせてもらうんだ」
「わあ、いいですね。私達もお願いしてみようかな。ね、上村さん」
親しげに上村に話しかける麻倉さんの姿に、胸がチクリと痛む。
「うん、まあ……とりあえず、俺らも席に着こうか」
少し前から、ホール担当の女性がすぐ側で待機していた。上村が女性とアイコンタクトを取ると、それに気が付いた麻倉さんが上村の腕を取る。
「それじゃあ失礼します」
「ええ、また……」
私は黙ったまま、二人が奥の個室に案内されるのを見送った。あれは、前に私と上村が一緒に食事をした席だ。
「驚いたね、あの二人プライベートでもここに来てるんだ」
「え、どういうことですか?」
「あれ、三谷さんは知らないのかな。上村くん、ここの契約取るのずいぶん苦労してたでしょう」
「ええ、……それは上村から聞いてます」
あの時、上村は珍しく私に弱音を吐いた。と言ってもほんの一瞬だけだったけれど。