暗くなった視界の中、ドンッとした衝撃と同時に全身に痛みが生じた。
「痛ってぇ」
そうして目を開けるとさっき落ちた場所である、玄関にいた。
「イタタ…」
俺の胸の上に転げ落ちた梨花も目を覚した。
2人してスマホを確認すると、元の日付に戻っていた。

衝撃音を聞いて近くにいた新田が慌てて駆け付けてきた。
「2人とも大丈夫!?」
「あぁ。俺は大丈夫」
「梨花は?」
「うん…」
梨花はちょっとした、放心状態だった。
「…ねぇ、彩ちゃん。私と亮一くんってどんな関係?」
「へ?付き合ってるんでしょ?体育祭の借り物競争で梨花のお題に遠藤くんが出たのがきっかけで…」
「変わってない…」
梨花はぼう然とした表情で頭を垂れた。
本当に過去は、少しだけ変わったけど、結果として俺達が付き合ってるという今は変わらなかった。
こんなことしてまで、俺と別れたいのか。
「梨花が俺の事を嫌いだと言うならしょうがない。でも、2人の思い出や、俺の気持ちは、消さないで欲しかった」
我慢の限界に達した僕はいつの間にか口にしていた。
「そんなつもりじゃ」
そして焦る梨花に気付かず、僕は最後の一言を言葉にしていた。
「梨花の気持ちは分かった。別れよう」

こうして、俺達は別れた。
梨花が俺の事を嫌いな理由は聞かないまま。

それから廊下ですれ違っても梨花に声を掛けることは無くなった。
もちろん、かけられることも。