それから数日後。
廊下で梨花と梨花の親友の新田彩菜(にったあやな)の姿を見掛けた。
声を掛けようと思ったが2人とも、なぜだか神妙な面持ちだったので普通に通り過ぎようとした。
しかし、意外にも「あ、亮一くん」と声を掛けられた。
「クリスマスね」
「あ、調べてきた?」
僕の想像していた反応に反して、梨花はふるふると首を横に動かした。
「…私、やっぱり行かない」
注意しないと聞こえないような、か細い声でそう言った。
下を向きながら。
「え、何で?用事出来たの?」
「…」
僕の純粋な疑問に梨花は言葉を出そうと口を開けたが、何も出てこなかった。
そして、ただ一言涙交じりの声でごめんね、と言って走って僕の前から去っていった。
騒がしい廊下の中、一人時が止まったかのように、ただ、ぼう然と俺は立ち尽くしていた。
その日の放課後、梨花に理由を聞こうとしたが、梨花は僕を避けるように走って帰っていってしまった。