隣に感じていたはずのぬくもりが冷たい雪に変わった。
帰り道、寂しさを感じながら歩を進める。
だけどなぜかつい、止まってしまう。
そして隣を見て、君がいない事を感じる。
こんな毎日に慣れる日が来るのかな。
それは遠い日のような気がする。
悲しい現実に胸が痛む。
すると後ろから「遠藤くん!」と呼ばれたので振り返ると走ってこっちへ向かってくる新田の姿が見えた。
「…これ」
息を切らしながら差し出してきたものは一枚の封筒だった。
「さっき、梨花から届いて…」
「梨花から?」
「うん。…遠藤くん、ありがと。遠藤くんと一緒にいる時の梨花、本当に幸せそうだったから…」
そこまで言って、恥ずかしくなったのかじゃあ、とあっという間に去っていった。
封筒を開けると1枚の手紙が入っていた。
そしてそこには愛らしい文字が並んでいた。
『亮一くんへ
亮一くんと一緒にいる時間がとっても楽しかった。楽し過ぎて、別れる時間なんて無いと思ってた。
寂しい想いをしてほしくなくて、嘘でも亮一くんを嫌いって言った事、別れようと言った事、後悔しています。
直接、別れようとか言おうと思ってたけど、出来なくて、電話で言って。
それ位、亮一くんが大好きでした。
もし良かったら、いつか亮一くんに見せたくなるような自分になれたら、会って、お話しさせて下さい。
それまでは、亮一くんの事は嫌いでいます。好きになりすぎて嫌いになっちゃったって。
だから、待ってて。
亮一くんに出会わなきゃ良かったなんて。
もう、思いません。
亮一くんに出会えて本当に良かった。
ありがとう。
梨花』
雪に混じって涙が流れていく。
君と出会わなきゃ良かったなんて。
そんな事言ってた君が出会えて良かったって言ってくれて。
僕は、また歩き出した。
3年後、成人式での同窓会、君は「亮一くん!」
あの時のように笑顔で僕にまた、声を掛けた。