君と出会わなければよかったなんて


別れというものは、ある日突然にやって来るものだった。


放課後の廊下は意外と静まり返っていると感じる。
特別棟の掃除を終えた俺、遠藤亮一(えんどうりょういち)は早歩きで玄関へと向かう。
本当は走りたいところだけど、職員室が近いので控えておく。
僕がこんなにも急いでいるのには理由がある。
今日は彼女である、山下梨花(やましたりんか)と帰る約束をしているのだ。
彼女とはもうすぐ付き合って1年になる。
嬉しさでウキウキとスキップしそうになる。
だけど、玄関に彼女の姿は無く、冷たい風だけが吹いていた。
靴箱を確認してみるとまだ外靴があったので何か用事かな?と思い待つ事にした。
10分、20分…
外の景色がどんどん白く変わっていく。
どうしたのかな、心配になってきた。
と、その時
「あれ、遠藤くん」
「田村」
クラスメイトの田村穂波(たむらほなみ)に声を掛けられた。
コミュ力があってお人好しで女子の中ではダントツで話しやすい。
「梨花知らない?」
田村は梨花と仲が良いので何か知ってると思った。
「梨花ならさっき、職員室入ってたの見たよ」
やはり予感は的中した。
「あ、梨花と待ち合わせか!お邪魔になっちゃうね」
そう言いながら田村は去っていった。

一応、職員室に行ってみるかと人気の無い階段を上がり職員室の前に辿り着いた。
と、その瞬間目の前の扉がガラッと開いて「失礼しました」とお辞儀をする女子高生が出てきた。
長い髪を下ろしたままくるりと振り返って驚いた顔をした。
「梨花」
僕がそう名前を呼んだ瞬間、ぱっと笑顔を見せた。
「亮一くん!」
でも僕はこの時は気付いてなかったんだ。
梨花の顔が一瞬、曇ったことに。