今は昔。江戸時代くらい昔の日本に美人画を上手に描く天才画家が居ました。彼女には一回り若い夫が居ました。彼は女房の熱狂的なファンでした。飯の種になる美人画とのお別れを本当に悲しんでいました。それを不憫に想った女房は、夫の為だけの美しい女性を描きました。驚いた若夫が最初の内は姉さん女房に感謝してくれたのですが、人気作家の女房より絵姿の方が大好きになりました。どこに行くのもご飯を食べるのも、眠るのも一緒になりました。驚いたのは姉さん女房です。よかれと想いした事が夫と自分の仲を裂く事になろうとは、夢にも思ってなかったのです。

ある晩、こっそり家を出る支度を整えた女房は眠る若夫の大切な傑作とも言える美人画を激しい嫉妬の為に、ビリビリに裂いて燃やしました。そうして女房は貧困な家を後にしました。