その5分後。

油壺マリンパーク内に館内放送が鳴り響いた。

『お客様に迷子のご案内です。川崎市からお越しの海原市蔵(うなばらいちぞう)様。

お孫様がサービスカウンターでお待ちでございます。

迷子の海原市蔵・75歳様。

お孫様が大変ご心配されております。

ご家庭で何があったかは存じませんが、

速やかに最寄りのサービスカウンターへお越し下さい。

お孫様が悲嘆のあまり手が付けられないほどタダをこねて、

係員一同、大変迷惑……いえ、失礼、困惑致しております。

海原市蔵様。どうかこれ以上、我々係員を苦しめないで下さい。

家庭内でのいざこざ等の危険物は水族館には持ち込み禁止です。

どうぞ速やかにお孫様を引き取って下さいませ。

重ね重ねお願い致します』