すると案の定、あの大カメは苦しそうに目をつぶって伸びていた。

「しっかり致せ!カメ!何故自分の分の食料まで私に捧げた!?」

カメはうっすらと目を開く。

「寿命です……噴火で仲間も皆死んだ。貴方に全部あげる」

「仲間ならば私がなってやる!!昔我が仲間と家族は桃太郎に皆殺しにされ館も焼かれた。私に帰る場所などない!ずっと新たな鬼ヶ島を捜してやっと見つけたのだ。安住の地と友を!」

だがカメは答えない。息をするのがやっとだ。

寿命ならば私が新たな命を与えればよい。

私にはそれができる。

私は百命鬼(ひゃくめいき)。百の命を持つ鬼なのだ。

ただ問題なのは今幾つめの命を自分が使っているのかだ。98だったか、99か。

思えばかなり無茶をした。自分の命が残り何個か全く覚えていない。

「人と戦い、命を落とし過ぎたか」

もう一度カメの顔を見る。血の気がない。もう時がないのだ。

「わははは!私とした事が今更命を惜しむとは情けない!案ずるなカメ!すぐに助けてやるぞ!!」

私は笑いが止まらなかった。ここが命の捨て時だ。今日まで生き伸びた甲斐があったというものだ。

私は最高の気分で自らの心臓に右手を突き立てた。