ギラギラと照りつける太陽の下、私は遂に新天地を見つけた。

筏から島に上陸すると深呼吸する。潮風に混じり、微かに硫黄の匂いがした。火山か。

足元を見ると黒い岩石が砂浜を広く覆っている。かつて溶岩が流れ出た証だ。どうやら無人島のようだ。私は自然に笑みが零れた。

「ここが新たな鬼ヶ島だ!」

あまりの喜びについ雄叫びを挙げたら、すぐ側の岩がグラリと動いた。驚いて見ると岩だと思ったのは大きなカメだった。

「これは驚かせてすまぬ。私は鬼ヶ島より来た鬼である」

礼儀と愛想は鬼にも必要だ。相手はカメでもこの島の先住者なのだから。

だがカメは私の威厳に畏れを抱いたのだろう。

じぃっと私を見上げていたかと思うと、モソモソと踵を返してしまった。

そして翌朝、流木で作った私の小屋の前に草花と草の実が置かれていた。どうやらカメからの贈り物らしい。

「貢物とは可愛い奴め」

私はすっかりこの島が気に入ってしまった。

あの日以来小さな島なのにカメに出会う事はなかった。

よほどシャイなカメなのだろう。それでも毎朝必ず小さな贈り物がある。

話をしたいな、一度くらいは。

なのに、10日続いた贈り物は翌日、ピタリと止まった。

その翌日もその次の日も。

「別に楽しみにしていた訳ではないわ。私はどちらかというと肉と魚の方が」

そう言いかけて、ハッとなる。

今は枯れてしまったみずみずしい草花と赤い草の実。火山島は植物が少ない。

「まさか自分の食べ物を削っていたのか!?」

私は慌てて島の隅々を探した。