「新しいコートが欲しいんだ」
そう言う彼女に連れられて店を回り、早1時間が経った。女性というのは、買い物にとても時間をかける。僕はさっさと決めたい性分だから、子供の頃から買い物が苦手だった。特に母と行くのが嫌で、それは今でも変わらない。
「これ可愛いなぁ~」
だけど、彼女とだと不思議とそういう嫌な感じない。商品を手に取っては、表情をコロコロと変える彼女を見て、僕は嬉しくなる。
「よし! 」
彼女が一際大きな声で言う。
「何? 」
「これとこれが良いと思うんだけど、どっちがいいかなぁ? 」
両手に持ったハンガーを交互に上げて、首を傾げる。
右手には、ベージュのロングコート。左手には、白くて襟にモフモフの付いたコート。
「えっと……」
迷う。こういう時、どちらと答えるのが正解なのだろう。昔、母にも同じことを訊かれて、『こっち!』と言ったら、『あんた何にも分かってないわね』と怒られたことを思い出す。
そう、こういう場合、もう自分の中で決めてから訊いているのだ。絶対に外したくない。
「僕は、そっちの白いのがいいと思うけど……」
彼女はフワッと柔らかな印象だから、よく似合うのではないか、と感じた。
「だよね、だよね! 」
その言葉に、ホッと胸を撫で下ろした。
「このファーが可愛いんだよねぇ」
彼女がモフモフを触って言う。
(ああ、それファーって言うんだ。へぇ~)
そう言う彼女に連れられて店を回り、早1時間が経った。女性というのは、買い物にとても時間をかける。僕はさっさと決めたい性分だから、子供の頃から買い物が苦手だった。特に母と行くのが嫌で、それは今でも変わらない。
「これ可愛いなぁ~」
だけど、彼女とだと不思議とそういう嫌な感じない。商品を手に取っては、表情をコロコロと変える彼女を見て、僕は嬉しくなる。
「よし! 」
彼女が一際大きな声で言う。
「何? 」
「これとこれが良いと思うんだけど、どっちがいいかなぁ? 」
両手に持ったハンガーを交互に上げて、首を傾げる。
右手には、ベージュのロングコート。左手には、白くて襟にモフモフの付いたコート。
「えっと……」
迷う。こういう時、どちらと答えるのが正解なのだろう。昔、母にも同じことを訊かれて、『こっち!』と言ったら、『あんた何にも分かってないわね』と怒られたことを思い出す。
そう、こういう場合、もう自分の中で決めてから訊いているのだ。絶対に外したくない。
「僕は、そっちの白いのがいいと思うけど……」
彼女はフワッと柔らかな印象だから、よく似合うのではないか、と感じた。
「だよね、だよね! 」
その言葉に、ホッと胸を撫で下ろした。
「このファーが可愛いんだよねぇ」
彼女がモフモフを触って言う。
(ああ、それファーって言うんだ。へぇ~)