それでも二人は優しかった。
こんな私にも、ちゃんと目を合わして話してくれる。

「あたしは北條燐だよ。一年の時はクラス違ったよね？だから美柳さんと一緒に話をしたいなってさ」

そう言う北條さんは私を見て優しく笑った。
綺麗な黒髪が印象的な、女優さんみたいに綺麗な女の子。

そしてもう一人。
本来校則違反のはずの、綺麗な金髪が似合うショートヘアの可愛い女の子。

「あたしは小坂花音！花音か、のんちゃんって呼んでね！馴れ馴れしくて子供っぽくて、うざいって言われるけど、気にしない気にしない」

とても明るい小坂さんは、もうすでに私の事を『友達』と思っていてくれているみたいで、いきなりベットの上の私に抱き付いてきた。
ちょっと馴れ馴れしい小坂さん。

そんな二人の本音は分からない。
なんで私なんかに声を掛けるのか、全く理解が出来ない。
だからここはまた無視しようかと思った。
そうしたらまた今まで通りの自分に戻れるし。

一人の時間が好きなら、そうするべきなんだけど・・・・・・。

いつの間にか私は顔を上げていた。

理由は・・・・やっぱり私も二人の事が大好きだから！

「み、美柳空です。よろしく！」

緊張しながら、短く私は答えた。
声は自分でも驚くほど明るい。

一方の二人は揃って私に笑顔を見せてくれた。

まるであの頃のように、無邪気な笑みを見せてくれる明るい二人。

「空だね！仲良くしよ」

北條さんにいきなり下の名前を呼ばれて私は戸惑った。
私もいい加減下の名前で呼んだ方がいいのだろうか？

・・・・・・。

私に抱きついてくる花音ちゃんも、嬉しいのか急に力が強まる。

「いえーい！そらちゃんと『友達』になれた！ってかそらちゃんの髪綺麗だよね！シャンプー何使ってるの？ってか髪切った！？」

「って、花音は何空の頭の匂いを嗅いでるのさ！変態オヤジか！って空って髪短い方が可愛いよね。スッゴくおに空いだし」

私に抱き付く花音ちゃんに続いて、燐ちゃんも後ろから私に抱き付いて来た。
まるで、『もう二度と手放すか』とでも言うように、力強く私を抱き締める燐ちゃん。

不思議と燐ちゃんの嬉しそうな胸の鼓動が伝わってくる。

ってか花音ちゃん、どさくさに紛れて私の体のあちこちを触るのは止めて戴きたいです・・・・。
もしかして男の子より女の子の方が好きなんだろうか？

だとしたら、なんか変な気持ち・・・・・。

やがて二人は私から離れた。
そして花音ちゃんは優しい笑みを見せながら、口を開く。

「『最悪の関係』になってしまったら、やり直せばいいだけ。難しいことかな？ねぇ、りんりんと喧嘩したうみちゃん？」

「そうだね。素直に謝って、今の気持ちを伝えるだけ。でもこれが中々難しいんだよね」

花音ちゃんの直後、燐ちゃんや花音ちゃんとは違う女の子の声が聞こえた。
振り返ると、何故だかちょっと呆れた表情の川下海（カワシタ　ウミ）ちゃんの姿がある。

って、海ちゃん？