「まあ、あれだな」
店員の姿が見えなくなってから、瀬野は小皿に醤油を垂らしながら口を開いた。
「俺も正直、何つっていいのか分かんないけどよ。高沢はまだまだ若いんだから、これからいくらでも出逢いのチャンスはあるだろうさ。それに、お前は結構モテてるからな。――高沢をいいって言ってる子、俺の知る限りでも四、五人はいるぜ? ま、高沢本人にその気がなけりゃ意味ないけどよ」
瀬野は微笑を浮かべると、マグロの刺身にワサビを少し載せ、それに醤油を付けて口に運んだ。
宏樹はそれを黙って見つめながらビールを呷る。
千夜子以外の異性のことは眼中にもなかった。
ずっと、彼女への執着は凄まじかった、と改めて思う。
ただ、今はもう、自分でも驚くほどに愛が冷めている。
あれほど好きだったはずなのに、昨晩の出来事だけで、こうも気持ちが変わってしまうものだったのか。
「――ほんとは、そんなに好きじゃなかったのか……?」
無意識に口に出していた。
だが、瀬野には、宏樹の消え入るような声は完全には聴こえなかったらしく、「何か言ったか?」と怪訝そうに訊ねてきた。
「いえ、何でもないですよ」
宏樹は自らを嘲るように口元を歪め、残りのビールを飲みきった。
「おっ! お前のもなくなったな? よし、追加すっか!」
瀬野はニカッと笑うと、近くを通りかかった店員に追加注文を言い付けていた。
店員の姿が見えなくなってから、瀬野は小皿に醤油を垂らしながら口を開いた。
「俺も正直、何つっていいのか分かんないけどよ。高沢はまだまだ若いんだから、これからいくらでも出逢いのチャンスはあるだろうさ。それに、お前は結構モテてるからな。――高沢をいいって言ってる子、俺の知る限りでも四、五人はいるぜ? ま、高沢本人にその気がなけりゃ意味ないけどよ」
瀬野は微笑を浮かべると、マグロの刺身にワサビを少し載せ、それに醤油を付けて口に運んだ。
宏樹はそれを黙って見つめながらビールを呷る。
千夜子以外の異性のことは眼中にもなかった。
ずっと、彼女への執着は凄まじかった、と改めて思う。
ただ、今はもう、自分でも驚くほどに愛が冷めている。
あれほど好きだったはずなのに、昨晩の出来事だけで、こうも気持ちが変わってしまうものだったのか。
「――ほんとは、そんなに好きじゃなかったのか……?」
無意識に口に出していた。
だが、瀬野には、宏樹の消え入るような声は完全には聴こえなかったらしく、「何か言ったか?」と怪訝そうに訊ねてきた。
「いえ、何でもないですよ」
宏樹は自らを嘲るように口元を歪め、残りのビールを飲みきった。
「おっ! お前のもなくなったな? よし、追加すっか!」
瀬野はニカッと笑うと、近くを通りかかった店員に追加注文を言い付けていた。