◆◇◆◇
時計が午後七時を回ろうかとしていた頃、宏樹はようやく仕事を一段落させた。
課長からの説教に加え、瀬野の質問攻め――といっても未遂に終わったが――のお陰か、燻り続けていたイライラも消えたように感じた。
しかし、緊張感から解放されたとたん、再び昨晩のことが頭を過ぎってゆく。
(いい加減、気持ちを切り替えないと……)
そんなことを考えながら、会社の外に出た時だった。
「高沢!」
日中の質問攻撃の張本人の声が、宏樹を呼び止めた。
宏樹は、聴こえなかった振りをしてやろうか、と思ったものの、つい、条件反射で立ち止まって振り返ってしまった。
瀬野は軽やかな足取りで、宏樹の元まで駆け寄って来る。
「お前、俺にちょっと付き合えや」
「は? 付き合うって……?」
「いいからいいから!」
宏樹の都合も訊かず、瀬野は肩に自らの腕を回してきた。
その行為からは、お前を絶対に逃がさん、という意思表示がありありと出ている。
当然ながら、隙あらば逃げたかった宏樹であったが、こうなってしまっては仕方がない。
「――ちょっとだけですよ」
肩に載せられた腕の重さを感じながら、宏樹はうんざりとばかりに呟いた。
時計が午後七時を回ろうかとしていた頃、宏樹はようやく仕事を一段落させた。
課長からの説教に加え、瀬野の質問攻め――といっても未遂に終わったが――のお陰か、燻り続けていたイライラも消えたように感じた。
しかし、緊張感から解放されたとたん、再び昨晩のことが頭を過ぎってゆく。
(いい加減、気持ちを切り替えないと……)
そんなことを考えながら、会社の外に出た時だった。
「高沢!」
日中の質問攻撃の張本人の声が、宏樹を呼び止めた。
宏樹は、聴こえなかった振りをしてやろうか、と思ったものの、つい、条件反射で立ち止まって振り返ってしまった。
瀬野は軽やかな足取りで、宏樹の元まで駆け寄って来る。
「お前、俺にちょっと付き合えや」
「は? 付き合うって……?」
「いいからいいから!」
宏樹の都合も訊かず、瀬野は肩に自らの腕を回してきた。
その行為からは、お前を絶対に逃がさん、という意思表示がありありと出ている。
当然ながら、隙あらば逃げたかった宏樹であったが、こうなってしまっては仕方がない。
「――ちょっとだけですよ」
肩に載せられた腕の重さを感じながら、宏樹はうんざりとばかりに呟いた。