涼香は口は悪いが、人一倍優しくて気を遣う。
高校に入学してからの付き合いだから、決して長いとは言えないが、それでも、涼香の本質は分かっている。
分かっているからこそ、胸が酷く痛んだ。
(幸せって、いったい何なんだろ……?)
そんなことをふと考える。
幸せになりたい。
しかし、たったひとりの幸せも、結局は誰かの犠牲の下で成り立つ。
どんなに綺麗ごとを言ってみても、みんなが平等に、なんて決してあり得ないのだ。
自分の気持ちで正直でありたい。
半面で、誰かを傷付けることを非常に恐れている。
「どうしたらいい……?」
紫織はポツリと訊ねた。
誰もいないこの部屋の中では、自分の問いかけに誰も答えてくれないと分かっていても、口に出さずにはいられなかった。
それほど、紫織は孤独を感じていた。
不安で、怖くて、胸が押し潰されそうだった。
「――宏樹君……」
紫織は無意識に、宏樹の名を口にしていた。
朋也も涼香も、同じくらい好きだし大切に思っている。
だが、それ以上に、紫織には宏樹の存在が大きい。
「顔……、見たいよ……」
紫織は呟くと、寝返りを打ってうつ伏せた。
額に載せられていたタオルは支えを失い、そのまま、敷布団の上にスルリと落ちていった。
高校に入学してからの付き合いだから、決して長いとは言えないが、それでも、涼香の本質は分かっている。
分かっているからこそ、胸が酷く痛んだ。
(幸せって、いったい何なんだろ……?)
そんなことをふと考える。
幸せになりたい。
しかし、たったひとりの幸せも、結局は誰かの犠牲の下で成り立つ。
どんなに綺麗ごとを言ってみても、みんなが平等に、なんて決してあり得ないのだ。
自分の気持ちで正直でありたい。
半面で、誰かを傷付けることを非常に恐れている。
「どうしたらいい……?」
紫織はポツリと訊ねた。
誰もいないこの部屋の中では、自分の問いかけに誰も答えてくれないと分かっていても、口に出さずにはいられなかった。
それほど、紫織は孤独を感じていた。
不安で、怖くて、胸が押し潰されそうだった。
「――宏樹君……」
紫織は無意識に、宏樹の名を口にしていた。
朋也も涼香も、同じくらい好きだし大切に思っている。
だが、それ以上に、紫織には宏樹の存在が大きい。
「顔……、見たいよ……」
紫織は呟くと、寝返りを打ってうつ伏せた。
額に載せられていたタオルは支えを失い、そのまま、敷布団の上にスルリと落ちていった。