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 仕事が終わり、家に帰宅すると八時を回っていた。

 宏樹は自室へ戻る前に、先にリビングへ立ち寄った。

 中では両親が揃って夕飯を食べていた。
 その中で、朋也はすで食べ終わったようで、食後のおやつのスナック菓子の封を開けようとしていたところであった。

「お帰り、宏樹」

 宏樹を見るなり、母親は箸を置いて真っ先に声をかけてくる。

「帰りが遅そうだったから先に食べちゃってたわよ」

「ああ、いいよ」

「宏樹も食べるでしょ? すぐに用意するから着替えてらっしゃい」

「ああ、そうする」

 我ながらずいぶんと素っ気ない返事だ、と宏樹は思った。

 だが、母親は、仕事で疲れていると思ってくれているのか、休日の時のように突っかかってこない。
 それはそれでありがたいが、半面でこそばゆいような変な感じがする。

 宏樹は一度自室へ引っ込むと、スーツからスウェットの上下に着替える。
 部屋着になると、窮屈さから一気に解放されて気持ちも軽くなった。