再び、中には静けさが広まる。

 涼香の身体から力がいっぺんに抜けた。
 フラリと椅子に腰を下ろすと、そのまま机の上に突っ伏した。

 自分の気持ちなんて気付いてもらえるはずがない。
 多くは決して望めない。
 分かっているはずなのに、この空虚感は一体何なのだろう。

 ほんの一瞬でも、紫織と変われたらどんなに良いか。
 そう思ってしまった自分にも嫌気が差す。

(どっちも欲しいなんて、わがままにもほどがある……)

 涼香の瞳が、じわじわと滲んでゆくのが分かった。
 泣きたくなんてないのに、そう思えば思うほど、涙は湧き出る泉のように留まるところを知らない。

(誰も、来ないでよ……)

 涼香は小さく嗚咽を漏らしながら思った。