「涼香」
紫織は涼香の名前を呼んだ。
涼香は雪の中で立ち止まり、振り返って「なに?」と紫織を真っ直ぐに見つめてきた。
「なんか、私に言うことない?」
どう切り出していいか分からず、つい、喧嘩腰な訊ね方をしてしまった。
その時、涼香のポーカーフェイスがわずかに崩れた。
「――『なんか』って?」
あくまでもシラを切るつもりか、わざとらしく首を傾げながら訊き返してきた。
紫織は怯みかけたが、一度出てしまった言葉は取り消すことなど出来ない、と思い直して意を決した。
「涼香、私のことにはよく口出しするけど、自分のことは全然話さないよね? 私はそれが当たり前だと思っていたつもりだったけど、やっぱり、心のどこかではそれが引っかかってて……。
ねえ、どうして涼香は私に何も言ってくれないの? 私は信用出来ない? それとも、本当は私のこと……、嫌いなの……?」
「馬鹿言わないで!」
涼香は語気を荒らげた。その表情はいつになく険しさを増している。
「あんたのこと、嫌いなわけないでしょ。私はね、めんどくさいことは大っ嫌いなんだから、嫌だと思ったら最初っからあんたに近付こうなんて考えもしないよ!」
「じゃあ、なんで話してくれないの?」
「それは……」
紫織の再三の質問に涼香は口籠った。
避けるように視線を逸らし、忙しなく目をあちこちにさ迷わせている。
ふたりの間に静けさが流れてゆく。
その内に、校舎の方から始業を知らせるチャイムが鳴り響いたが、涼香は全く動く気配がない。
紫織は教室に戻らないと、と思いつつ、それ以上に涼香の反応の方が気になっていた。
紫織は涼香の名前を呼んだ。
涼香は雪の中で立ち止まり、振り返って「なに?」と紫織を真っ直ぐに見つめてきた。
「なんか、私に言うことない?」
どう切り出していいか分からず、つい、喧嘩腰な訊ね方をしてしまった。
その時、涼香のポーカーフェイスがわずかに崩れた。
「――『なんか』って?」
あくまでもシラを切るつもりか、わざとらしく首を傾げながら訊き返してきた。
紫織は怯みかけたが、一度出てしまった言葉は取り消すことなど出来ない、と思い直して意を決した。
「涼香、私のことにはよく口出しするけど、自分のことは全然話さないよね? 私はそれが当たり前だと思っていたつもりだったけど、やっぱり、心のどこかではそれが引っかかってて……。
ねえ、どうして涼香は私に何も言ってくれないの? 私は信用出来ない? それとも、本当は私のこと……、嫌いなの……?」
「馬鹿言わないで!」
涼香は語気を荒らげた。その表情はいつになく険しさを増している。
「あんたのこと、嫌いなわけないでしょ。私はね、めんどくさいことは大っ嫌いなんだから、嫌だと思ったら最初っからあんたに近付こうなんて考えもしないよ!」
「じゃあ、なんで話してくれないの?」
「それは……」
紫織の再三の質問に涼香は口籠った。
避けるように視線を逸らし、忙しなく目をあちこちにさ迷わせている。
ふたりの間に静けさが流れてゆく。
その内に、校舎の方から始業を知らせるチャイムが鳴り響いたが、涼香は全く動く気配がない。
紫織は教室に戻らないと、と思いつつ、それ以上に涼香の反応の方が気になっていた。



