◆◇◆◇
教室を出て、涼香と共に来た場所は学校の裏庭だった。
そこは、雪が降ってから誰も足を踏み入れてないのか、氷の混ざったような白雪が積もったままになっている。
涼香はその中を、躊躇うことなく進んで行く。
「ほら、紫織も来な?」
涼香に促されたものの、そこの雪の量は膝ほどまでではないにしろ、ふくらはぎの辺りまであるのは一目瞭然だ。
もっとも、涼香が先に入ってしまったのだから、そんな基準は考えるまでもなかったが。
紫織が雪の前で迷っていると、涼香は再びこちらへ引き返して来て、紫織の手首を引いて、雪の中へ引っ張り込む。
「りょっ、涼香っ? 何すんのっ?」
抗議をするものの、涼香はそんなものは意に介した様子もなく、ニヤリと悪戯っ子のように笑んだ。
「病み上がりなのは分かってるけどさ、たまには雪まみれになってみるのも悪くないんじゃない?」
「は? なにわけ分かんないことを……」
「いいから! たまには私に付き合いなさい!」
「『たまには』って……。いっつも付き合ってるじゃん!」
「まあまあ」
もう、何を言っても無駄なようだ。
紫織は深い溜め息を一つ吐くと、諦めて涼香に従い、雪を踏み締めた。
冬仕様のブーツを履いているとはいえ、それは、くるぶしより高めな程度なので、当然ながら、一歩を踏み出すごとに雪が靴の中へと入り込む。
紫織は刺すような冷たさと、濡れてゆく黒タイツの不快感に顔をしかめた。
一方、涼香の表情には変化が見られない。
(たまに、何考えてるのか分かんない時があるもんね)
そんな親友をまじまじと見つめながら、紫織は思った。
涼香は常に笑顔を絶やさない。
どんな時も悲愴感など微塵も出さず、明るく紫織に接してくれる。
だが時おり、涼香は何かを抑えているのではないか、と思ってしまうことがある。
どことなく、宏樹と同じ空気を纏っている。
そんな感じがどうしても否めない。
教室を出て、涼香と共に来た場所は学校の裏庭だった。
そこは、雪が降ってから誰も足を踏み入れてないのか、氷の混ざったような白雪が積もったままになっている。
涼香はその中を、躊躇うことなく進んで行く。
「ほら、紫織も来な?」
涼香に促されたものの、そこの雪の量は膝ほどまでではないにしろ、ふくらはぎの辺りまであるのは一目瞭然だ。
もっとも、涼香が先に入ってしまったのだから、そんな基準は考えるまでもなかったが。
紫織が雪の前で迷っていると、涼香は再びこちらへ引き返して来て、紫織の手首を引いて、雪の中へ引っ張り込む。
「りょっ、涼香っ? 何すんのっ?」
抗議をするものの、涼香はそんなものは意に介した様子もなく、ニヤリと悪戯っ子のように笑んだ。
「病み上がりなのは分かってるけどさ、たまには雪まみれになってみるのも悪くないんじゃない?」
「は? なにわけ分かんないことを……」
「いいから! たまには私に付き合いなさい!」
「『たまには』って……。いっつも付き合ってるじゃん!」
「まあまあ」
もう、何を言っても無駄なようだ。
紫織は深い溜め息を一つ吐くと、諦めて涼香に従い、雪を踏み締めた。
冬仕様のブーツを履いているとはいえ、それは、くるぶしより高めな程度なので、当然ながら、一歩を踏み出すごとに雪が靴の中へと入り込む。
紫織は刺すような冷たさと、濡れてゆく黒タイツの不快感に顔をしかめた。
一方、涼香の表情には変化が見られない。
(たまに、何考えてるのか分かんない時があるもんね)
そんな親友をまじまじと見つめながら、紫織は思った。
涼香は常に笑顔を絶やさない。
どんな時も悲愴感など微塵も出さず、明るく紫織に接してくれる。
だが時おり、涼香は何かを抑えているのではないか、と思ってしまうことがある。
どことなく、宏樹と同じ空気を纏っている。
そんな感じがどうしても否めない。



