雪花 ~四季の想い・第一幕~

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 教室を出て、涼香と共に来た場所は学校の裏庭だった。
 そこは、雪が降ってから誰も足を踏み入れてないのか、氷の混ざったような白雪が積もったままになっている。

 涼香はその中を、躊躇うことなく進んで行く。

「ほら、紫織も来な?」

 涼香に促されたものの、そこの雪の量は膝ほどまでではないにしろ、ふくらはぎの辺りまであるのは一目瞭然だ。
 もっとも、涼香が先に入ってしまったのだから、そんな基準は考えるまでもなかったが。

 紫織が雪の前で迷っていると、涼香は再びこちらへ引き返して来て、紫織の手首を引いて、雪の中へ引っ張り込む。

「りょっ、涼香っ? 何すんのっ?」

 抗議をするものの、涼香はそんなものは意に介した様子もなく、ニヤリと悪戯っ子のように笑んだ。

「病み上がりなのは分かってるけどさ、たまには雪まみれになってみるのも悪くないんじゃない?」

「は? なにわけ分かんないことを……」

「いいから! たまには私に付き合いなさい!」

「『たまには』って……。いっつも付き合ってるじゃん!」

「まあまあ」

 もう、何を言っても無駄なようだ。
 紫織は深い溜め息を一つ吐くと、諦めて涼香に従い、雪を踏み締めた。

 冬仕様のブーツを履いているとはいえ、それは、くるぶしより高めな程度なので、当然ながら、一歩を踏み出すごとに雪が靴の中へと入り込む。
 紫織は刺すような冷たさと、濡れてゆく黒タイツの不快感に顔をしかめた。

 一方、涼香の表情には変化が見られない。

(たまに、何考えてるのか分かんない時があるもんね)

 そんな親友をまじまじと見つめながら、紫織は思った。

 涼香は常に笑顔を絶やさない。
 どんな時も悲愴感など微塵も出さず、明るく紫織に接してくれる。

 だが時おり、涼香は何かを抑えているのではないか、と思ってしまうことがある。
 どことなく、宏樹と同じ空気を纏っている。
 そんな感じがどうしても否めない。