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 学校へ着くと、外とは対照的な暖かさに加え、涼香の明るい笑顔に迎えられた。

「おおっ! 紫織おはよーっ!」

 教室に入るなり、涼香は紫織に声高らかに挨拶し、さらには人目も憚らずに抱き着いてきた。

「あんた、風邪引いたんだって? もう、私、すっごく心配してたんだからねえ!」

 抱き締めるのに加え、今度は頭をグシャグシャと撫で回す始末。今朝の宏樹よりも遥かに乱暴だ。

「ちょっ……! 分かったから離して……!」

「何言ってんのよお? 今さら恥ずかしがる必要なんてないって!」

「違うって……! み、みんなが見てるでしょ……」

「んなもん気にしない!」

「気にするってばあ!」

 さすがに紫織も強く突っ込みを入れた。

 現に今、紫織と涼香はクラス中の晒し者になっている。
 こいつら絶対ヤバいって、とクラスメイト達の目は言っている。

「りょ、涼香、せめて教室出ようよ。ね? ね?」

 紫織が必死で訴えると、涼香は口の端を上げ「仕方ないな」と、やっとで解放してくれた。

「じゃ、せっかくだからふたりっきりの時間を作ろうか?」

 またしても誤解を招く言い方をする涼香。
 紫織はガックリと項垂れた。

 これにより、さらにクラスメイト達の好奇心を煽ったことは言うまでもない。