◆◇◆◇◆◇
辺りがまだ闇に包まれている頃、紫織はふと目を覚ました。
午前中からたっぷり寝たせいだからだろうか。
目を閉じてみても、なかなか深い眠りに落ちない。
しかも、いつにも増して部屋の冷え込みが激しいように感じる。
「そういえばお母さん、雪が降るとか言ってたっけ?」
紫織はひとりごちると、ゆっくりと身体を起こしてベッドから降り、窓辺へと近付いてカーテンを開けてみた。
と、外の光景を目にしたとたん、口をポカンと開けたまま言葉を失った。
町が白銀色に覆われていた。
屋根も木々も、まるでフワフワの綿菓子を載せられているようだ。
そして、限りなく黒に近い藍色の空からは、白い花弁が軽やかに舞い降りる。
それを紫織は、素直に綺麗だと思っていた。
寒いのはもちろん苦手だが、それでも雪は決して嫌いではないのだ。
(宏樹君と朋也も、この雪を見たのかな?)
ふと、そんなことを思った。
夕方の朋也の行為には驚き、朋也が朋也でなかったような気がして怖かった。
しかし、朋也が、本当は人一倍優しいのは知っている。
だから、これからもきっと、紫織と変わらずに接してくれるであろう。
(けど、朋也に甘えてばかりじゃダメだよね……)
紫織はいつまでも雪空を見つめながら、その先にあるであろう遠い未来に想いを馳せた。
[第五話-End]
辺りがまだ闇に包まれている頃、紫織はふと目を覚ました。
午前中からたっぷり寝たせいだからだろうか。
目を閉じてみても、なかなか深い眠りに落ちない。
しかも、いつにも増して部屋の冷え込みが激しいように感じる。
「そういえばお母さん、雪が降るとか言ってたっけ?」
紫織はひとりごちると、ゆっくりと身体を起こしてベッドから降り、窓辺へと近付いてカーテンを開けてみた。
と、外の光景を目にしたとたん、口をポカンと開けたまま言葉を失った。
町が白銀色に覆われていた。
屋根も木々も、まるでフワフワの綿菓子を載せられているようだ。
そして、限りなく黒に近い藍色の空からは、白い花弁が軽やかに舞い降りる。
それを紫織は、素直に綺麗だと思っていた。
寒いのはもちろん苦手だが、それでも雪は決して嫌いではないのだ。
(宏樹君と朋也も、この雪を見たのかな?)
ふと、そんなことを思った。
夕方の朋也の行為には驚き、朋也が朋也でなかったような気がして怖かった。
しかし、朋也が、本当は人一倍優しいのは知っている。
だから、これからもきっと、紫織と変わらずに接してくれるであろう。
(けど、朋也に甘えてばかりじゃダメだよね……)
紫織はいつまでも雪空を見つめながら、その先にあるであろう遠い未来に想いを馳せた。
[第五話-End]