「雪を見るのは嫌いじゃないけど」
宏樹は雪空を仰いだまま口を開いた。
「積もったら大変だな。交通機関は止まるし、車も渋滞するし、ロクなことなんてひとっつもない」
「――いきなり現実的なことを言うなよ」
朋也は眉をひそめて宏樹を睨んだ。
睨まれた宏樹は、微苦笑を浮かべながら肩を竦めている。
「朋也は俺と違って、結構ロマンティストだからな」
「馬鹿にしてんのかよ?」
「いや、褒めてるつもりだぞ?」
「どうだか」
朋也は不満を露わにして口を尖らせる。
それがよほどツボに嵌ったのか、宏樹は側でクツクツと忍び笑いを漏らした。
これでまたイライラが募ったが、ムキになればなるほど宏樹をさらに喜ばせるだけだというのが分かっていたので、奥歯を強く噛み締めながら堪えた。
(このサド野郎!)
口に出しては絶対に言えないので、朋也は心の中で吐き付けた。
そんな朋也の思いを知ってか知らずか、宏樹は突然、流行りの歌を口笛に乗せて奏で出した。
(いちいち腹立つ奴だな……)
朋也は宏樹を一瞥すると、そういえば、夜中に口笛を吹くと蛇が出るとかって言うよな、などと本当にどうでも良いことを考えていた。
宏樹は雪空を仰いだまま口を開いた。
「積もったら大変だな。交通機関は止まるし、車も渋滞するし、ロクなことなんてひとっつもない」
「――いきなり現実的なことを言うなよ」
朋也は眉をひそめて宏樹を睨んだ。
睨まれた宏樹は、微苦笑を浮かべながら肩を竦めている。
「朋也は俺と違って、結構ロマンティストだからな」
「馬鹿にしてんのかよ?」
「いや、褒めてるつもりだぞ?」
「どうだか」
朋也は不満を露わにして口を尖らせる。
それがよほどツボに嵌ったのか、宏樹は側でクツクツと忍び笑いを漏らした。
これでまたイライラが募ったが、ムキになればなるほど宏樹をさらに喜ばせるだけだというのが分かっていたので、奥歯を強く噛み締めながら堪えた。
(このサド野郎!)
口に出しては絶対に言えないので、朋也は心の中で吐き付けた。
そんな朋也の思いを知ってか知らずか、宏樹は突然、流行りの歌を口笛に乗せて奏で出した。
(いちいち腹立つ奴だな……)
朋也は宏樹を一瞥すると、そういえば、夜中に口笛を吹くと蛇が出るとかって言うよな、などと本当にどうでも良いことを考えていた。