◆◇◆◇
公園を出ると、宏樹と朋也は並んで夜道を歩いた。
ふたりの間に会話はなく、ただ、黙々と家に向かっている。
「あ」
突然、宏樹が小さく声を上げて立ち止まった。
「雪だ」
「雪?」
宏樹の言葉を、朋也はそのまま口に乗せた。
「――ほんとだ」
朋也も釣られるように呟き、空を仰いだ。
十一月に入って、初めての雪。
それらは音を立てることなく、ゆっくりと地上へと舞い降りる。
朋也は手を翳した。
すると、雪の欠片は朋也の手に落ち、一瞬にして透明な水となって儚く消える。
やっと掴まえたと思っても、スルリと手から抜けてゆく。
紫織を好きな気持ちは誰にも負けていないはずなのに、それでも、壊れた自転車のペダルのように空回りしてしまう。
「紫織は、見てるかな?」
不意に宏樹が口にした。
朋也は翳している手はそのままに、首だけを動かして宏樹を見た。
「多分寝てんじゃないの? 俺が行った時も、まだ体調が悪そうだったし」
「そっか。ま、仕方ないか」
宏樹はそう言うと、雪降る夜空を見上げた。
生まれたての雪の花は、とどまるところを知らず降り続ける。
今はすぐに消えてしまう小さなそれも、明日になれば、この町全体を白銀の世界へと変えてゆくだろう。
公園を出ると、宏樹と朋也は並んで夜道を歩いた。
ふたりの間に会話はなく、ただ、黙々と家に向かっている。
「あ」
突然、宏樹が小さく声を上げて立ち止まった。
「雪だ」
「雪?」
宏樹の言葉を、朋也はそのまま口に乗せた。
「――ほんとだ」
朋也も釣られるように呟き、空を仰いだ。
十一月に入って、初めての雪。
それらは音を立てることなく、ゆっくりと地上へと舞い降りる。
朋也は手を翳した。
すると、雪の欠片は朋也の手に落ち、一瞬にして透明な水となって儚く消える。
やっと掴まえたと思っても、スルリと手から抜けてゆく。
紫織を好きな気持ちは誰にも負けていないはずなのに、それでも、壊れた自転車のペダルのように空回りしてしまう。
「紫織は、見てるかな?」
不意に宏樹が口にした。
朋也は翳している手はそのままに、首だけを動かして宏樹を見た。
「多分寝てんじゃないの? 俺が行った時も、まだ体調が悪そうだったし」
「そっか。ま、仕方ないか」
宏樹はそう言うと、雪降る夜空を見上げた。
生まれたての雪の花は、とどまるところを知らず降り続ける。
今はすぐに消えてしまう小さなそれも、明日になれば、この町全体を白銀の世界へと変えてゆくだろう。