「私、別に朋也に同情なんてしてない。確かに、急に謝ってしまったのは自分でもおかしいって思ってるけど。でも、おかしいのは朋也も一緒でしょ? ねえ、何でそんなに怒るの?」

「別に怒ってない!」

「怒ってるでしょ!」

 精いっぱいの力を籠めて、紫織は朋也に声を荒らげた。

「何なのよいったい? お見舞いに来てくれて優しい言葉をかけてくれたかと思ったら、突拍子もないことを口走って……。
 ねえ朋也、朋也は私にどうしてほしいの? 言ってみなさいよ!」

 そこまで言いきった時、一瞬、目の前の朋也の姿がぼやけて見えた。

「おいっ!」

 紫織は危うくベッドから床に落ちそうになったが、すんでのところで朋也に抱き止められた。

「ったく、病人なら病人らしく大人しくしてろっての!」

 予想外のハプニングに紫織は絶句したまま、朋也の腕の中で固まっている。
 同時に、胸の鼓動が速くなってゆくのを感じた。

 宏樹と違い、朋也とは手を繋いだ記憶しか残っていないから、紫織を抱き締めている腕の強さに改めて驚いていた。

(そっか、朋也も男の子、なんだよね……)

 紫織は漠然とそんなことを思った。

「大丈夫かよ?」

 ぼんやりとしていた紫織に、朋也が訊ねてくる。

 そこでハッと我に返った。